ひめごと

2003/10/08 メディアボックス試写室
セックスを武器にして成功を手に入れようとした女たちのゲーム。
濃厚なセックス描写に彩られたサスペンス映画。by K. Hattori

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 家を出て一人暮らしを始めたばかりのサンドリーヌにとって、バイト先のクラブで知り合ったナタリーは憧れの存在だ。ヌードダンサーの彼女は、一糸まとわぬ姿で男たちの視線を引きつけコントロールする。やがて憧れのナタリーと同居することになったサンドリーヌは、彼女から自分の肉体と欲望をコントロールするすべを学び始めた。地味な少女だったサンドリーヌは、ナタリーの手ほどきでセックスが持つパワーに開眼。ふたりはこのパワーを使って、社会的な成功を手にしようと誓い合う。要領よく一流企業に就職したふたりは、周囲の男たちを籠絡して出世の階段を駆け上る。だがその頂上で待っていたのは、彼女たち以上にセックスのパワーを知り尽くした男だった……。

 監督は『白い婚礼』のジャン=クロード・ブリソー。主演はコラリー・ルヴェルとサブリナ・セヴク。セックスを武器に社会的な成功を手に入れようとする女たちが、逆にセックスの虜になってしまうという話はありきたりかもしれないし、ウブな少女が指南役の導きであっという間に凄腕になり、逆に指南役の女が恋におぼれて転落していくという展開もありがちなもの。しかしこの映画はそんな「ありきたり」で「ありがち」なお話に、どぎついセックス描写というスパイスをまぶして、カラフルな劇画風ドラマに仕立てている。セックス描写がストレートなので、隠微でわいせつな感じはしない。映画のオープニングに登場するヌードダンスの延長のように、ショーアップされたセックス描写が何度も繰り返される。ヌードダンス、オナニー、レズビアンセックス、通常のセックス、3P、乱交、近親相姦、輪姦など、セックスなら何でもござれだ。

 映画の序盤はまじめなドラマなのかと思っていたのだが、ふたりが会社に入ったあたりからこれが「ファンタジー」であることに気づかされた。この映画が描こうとしているのは登場する「人間」だけであって、舞台装置や背景は思い切って省略されているのだ。例えばふたりが働いている会社が、実際にどんな業務を行っている会社で、従業員規模がどの程度なのかといったことすら、映画を観ていてもまったく見当が付かない。この映画は物語の上でのリアリティを求めないのだろう。この映画が「現実」とつながっているのは、主人公を演じた若い女優たちの「肉体」を通じてだけなのだ。ヒロインたちの若々しい肉体の存在感が、次第に誇大妄想気味に肥大していくこのドラマを、観客の目線の高さにつなぎ止めている。これは作り手の明確な意図によるものだ。

 しばしば画面を横切る黒衣の人影がもっとシンボリックな扱いになっていると、ファンタジー度はさらに上がって映画も格調高くなったと思う。そうなれば映画後半の誇大妄想的な描写はさらにエスカレートできるから、エンディングやエピローグもさらに劇的な効果を生み出したに違いない。

(原題:Choses Secretes)

11月1日公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:バップ、ロングライド
配給問い合わせ:ロングライド 宣伝問い合わせ:ムヴィオラ
(2002年|1時間55分|フランス)
ホームページ:
http://www.vap.co.jp/

DVD:ひめごと
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