黄金の法

2003/09/18 東映第1試写室
『太陽の法』に続く大川隆法基本三部作の映画化。
幸福の科学の会員以外には意味のない映画。by K. Hattori

 新興宗教団体・幸福の科学が作った、信者向けの長編アニメ映画第3弾(製作は幸福の科学出版)。この教団が最初に映画を作ったのは94年の『ノストラダムス/戦慄の啓示』という劇映画で、その後は97年の『ヘルメス/愛は風の如く』、2000年の『太陽の法/エル・カンターレへの道』とアニメが2作続いた。僕はそのすべてを観ているのだが(一応東映系の番組として全国公開されるわけだし)、面白さという意味ではどんどんクオリティが落ちているような気がする。ただしこれは僕のように教団の外側にいる人間だからそう思えるだけで、幸福の科学の会員にとってはとても素晴らしい映画なのかもしれない。

 思うに『ノストラダムス〜』の頃は製作する側にも、「映画を使って新たな会員を獲得しよう」という布教の意図があったのだと思う。独りよがりな歴史観や救済感を抑えて、スペクタクル描写やストーリー性で観客を引っ張る意欲があった。『ヘルメス〜』にしたところで、ギリシア神話のものすごく個性的な(デタラメなと同義)翻案アニメだと思えなくもない。しかし前作『太陽の法』になると、これはもう教団の世界観や宇宙観を絵解きするものになってしまって、会員以外の一般人には何が何やらわからないものになっている。それは今回の『黄金の法』でも同じことだ。

 25世紀の少年サトルが30世紀からやってきたアリサという少女に出会い、タイムマシンで過去を旅する物語だ。彼らが出会い目撃するのは、ギリシアの英雄ヘルメスと妻アフロディーテ、出エジプトのモーセ、インドのゴータマ・ブッダ、イエス・キリストの磔刑、修行中の天台智など。タイムマシンで各時代を旅するという設定はありきたりすぎで、タイムとラベル中に故障が起きるたびに都合よく特定の時代の特定の場所に出てくるという繰り返しもつまらない。最初の1,2回はまともにタイムとラベルをして、その後は機械の不調になり、最後はエネルギー切れで大ピンチ……など、物語の構成をもうちょっと工夫すれば、これよりは多少観られる映画になったような気もする。

 映画を観ていてわかるのは、幸福の科学という宗教がイスラム教と神道を避けていることだ。これは「安全性」のためだと思う。キリスト教や仏教をどんなにいじくり回そうと、それによって殺されるようなことはない。でも神道は天皇制につながるので右翼からの攻撃が恐そうだし、イスラム教もかなりヤバイもんね〜。

 それにしても、なぜこんな映画を一般劇場で公開するのだろう。幸福の科学は図書伝道が中心だから、その販路を使ってビデオを売る方が安上がりだろうに。これまでに作られた劇場映画3作が、どれもビデオやDVDになっていないのも疑問だ。信者向けに3千セットや5千セットはすぐに売れそうなものではないか。あえて映画を作り、あえて劇場公開しても、儲かるのは小屋を貸している東映だけかもよ。

10月11日公開予定 丸の内東映他、全国東映系
配給:東映
(2003年|1時間50分|日本)
ホームページ:
http://www.toei.co.jp/ougon/

黄金の法
原作:黄金の法─エル・カンターレの歴史観
主題歌CD:愛と、勇気を。(Golden Breeze)
関連書籍:黄金の法(コミック版)

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