MUSA

2003/09/10 銀座ガスホール
歴史のミステリーに材をとった韓国製の集団抗争時代劇。
明のお姫様を救出した高麗人が元の騎馬軍団と戦う。by K. Hattori

 100年以上続いた元王朝(モンゴル族)の支配が終わり、明王朝がそれに替わった14世紀の中国。朝鮮の高麗王は新たな宗主国である明に使節団を送るが、スパイ容疑をかけられた使節団はそのつど投獄の憂き目にあったという。4回送られた使節団のうちひとつは、行方不明になって歴史の中から姿を消した。彼らはいったいどこに行ったのか……。そんな歴史の謎をもとにした、韓国製の冒険アクション映画だ。

 高麗から中国に送られた使節団一行がスパイ容疑で捕えられ、砂漠の果てにある流刑地に向かう。だが囚人護送の列をモンゴル軍の残党が襲撃して、明の役人は全員が殺され、高麗人たちは砂漠の真ん中に放置されてしまう。残された男たちは自力で故郷高麗に戻ろうと決意する。だがその途中で出会ったのは、モンゴル兵に捕えられた明王室のプヨン姫だった。彼女を救出して明王への手土産にすれば、自分たちにかけられたスパイ容疑も晴れるに違いない。そう考えた使節団生き残りチェ・ジョン将軍は、モンゴル兵の隊列を襲って姫を救出する。だが明の首都南京を目指して旅をする一行から再度姫を奪い返そうと、モンゴル兵たちはさらなる大群ですぐ後ろを追いかけてきた。高麗使節団一行は姫や漢族の生き残りを引き連れて、海辺にあるという明軍の砦に向かったのだが……。

 2時間18分の大作。監督はこれが日本初登場のキム・ソンス。姫の護衛役になる槍の名手で元奴隷のヨソル役は、『モーテルカクタス』『ユリョン』のチョン・ウソン。グループのリーダーとなるチェ・ジョン将軍を演じるのは、『魚と寝る女』のチュ・ジンモ。下級武士にして弓の名手チン・リプ役には、『眠る男』『太白山脈』のベテラン俳優アン・ソンギ。モンゴル兵から救出される明王室のプヨン姫を、『初恋のきた道』『HERO』のチャン・ツィイーが演じている。

 ロケ撮影による雄大な風景と、それに負けない大掛かりな戦闘スペクタクルが映画の見どころ。戦闘シーンは武侠片風のアクロバットではなく、リアルで生々しいものを作ろうとしているようだ。重武装の兵士同士が血と泥にまみれながら斬り合うシーンは、血沸き肉踊るチャンバラ活劇と呼ぶには凄惨なもの。体を斬られれば血が吹き出し、切断された腕や脚や首が宙を舞う。この映画の戦闘は勧善懲悪でもサバイバルでもなく、力と力のぶつかり合い、暴力と暴力の掛け算でしかないのだ。もともと高麗の使節団が、明のお姫様を助けなければならない義理はない。これは高麗人の見得と野心と打算が生み出した戦いであり、モンゴル兵の側もまた、族長の個人的な復讐からこの戦いに巻き込まれている。

 リアルな戦闘シーンに見応えはあるが、これが延々続くと観ていて疲れてしまう。『HERO』のように様式化された殺陣なら問題ないのだが、リアルな人殺しばかりをずっと観ていては少々胃がもたれてくる。

(原題:MUSA 武士)

正月公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
(2001年|2時間18分|韓国)
ホームページ:
http://www.musa-jp.com/

DVD:MUSA
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