ドラゴンヘッド

2003/08/30 渋東シネタワー4
望月峯太郎の人気コミックを映画化。主演は妻夫木聡とSAYAKA。
エピソードの組み立てが単調すぎて途中で飽きる。by K. Hattori

 過去にも『バタアシ金魚』や『鮫肌男と桃尻女』が映画化されている望月峯太郎の同名人気コミックを、飯田譲治監督が映画化したアクション・アドベンチャー映画。主演は人気者の妻夫木聡と松田聖子の娘・SAYAKA。既に歌手としてデビューしているSAYAKAはこれが本格的なメジャー映画デビュー作だが、これ以前にも短篇映画に出演しているからまったくの演技初心者というわけでもない。今回の映画を観る限り、演技はなかなか達者に見えた。今後の活躍に期待したいところだけれど、このあたりは娘のプロデュースに熱心な母親次第ということになるかもしれない。

 物語はトンネル内での新幹線脱線転覆事故から始まる。高速走行中の事故で乗員乗客はほぼ全滅したが、修学旅行でこの列車に乗り合わせていた3人の高校生が奇跡的に無傷で生き残った。何もわからないまま「助けは来るはずだ」と言う青木テル。恐怖に声を震わせるばかりの瀬戸アコ。そして暗闇の中で狂気に落ちていく元イジメられっ子の高橋ノブオ。狂気に取り付かれたノブオに追われるように、テルとアコは配管を抜けて外に脱出。しかしそこは火山灰が分厚く降り積もる、異様な世界に様変わりしていた。何かが起きて、世界は壊滅的な被害を受けたのだ。

 たまたま新幹線で生き延びたテルとアコが、手に手を取って東京を目指すロードムービー形式。ロードムービーは多種多彩なエピソードを「移動」で串刺しにまとめられる便利な形式なのだが、この映画ではエピソードの種類が似通ったものばかりで面白くない。主人公ふたりを襲う危機はいつも「頭のおかしい人」であり、危機から逃れる方法はいつも「頭のおかしい人が死ぬ」というものなのだ。なんという安易さだろう。それに引き換え、この映画ではロードムービーとしての基本がまったくできていない。主人公ふたりが仲違いをするとか、コンビの強者と弱者の関係が入れ替わるとか、主人公たちの意外な過去が浮かび上がってくるとか……。そんなエピソードがもっと効果的に盛り込まれていれば、この映画はもうちょっと面白く観られたと思う。

 ウズベキスタンにオープンセットを作ってロケしたというスケール感たっぷりの映像は見ものだが、時々どう見ても「こりゃ日本じゃねぇよ!」という地形が出てくるのは残念。映画の中の時制もかなりいい加減。「脚の傷はどうした!」「食料や水はどうしてるのだ!」と突っ込みどころも満載だ。ちなみに人間は水さえあれば1週間ぐらい生きられるそうだが、水なしだと3日ぐらいが限界だと言われている。主人公たちが飲料水なしで何日も瓦礫の中を歩くなどあり得ないだろうに……。こうしたシーンも含めて、飢えと乾きの描写にリアリティが感じられないのはこの映画の大きな欠点。生理的な飢餓感にリアリティがないから、生存者たちのパニックや暴徒化にも肌で感じられるリアリティがないのだ。

8月30日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2003年|2時間02分|日本)
ホームページ:
http://www.dragonhead-movie.jp/

DVD:ドラゴンヘッド
主題歌CD:心ひとつ(MISIA)
原作コミック:ドラゴンヘッド(全10巻セット)
関連DVD:飯田譲治監督
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