《DUEL〜対決》
「2LDK」VS「荒神」

2003/08/20 映画美学校第2試写室
堤幸彦監督と北村龍平監督が同一コンセプトの映画で作品対決。
女同士の戦いを描いた「2LDK」の方が一枚上手か。by K. Hattori

 『トリック』や『恋愛寫眞』のトリッキーな演出で知られる堤幸彦監督と、『VERSUS』や『あずみ』でアクション演出に定評のある北村龍平監督が、「限定された空間で2人の主人公が殺し合いをする」という同一コンセプトの作品を競作したもの。《DUEL〜対決》とは映画の内容を示しているが、同時にふたつの作品の対決という意味も込められている。それぞれ1時間強の作品で、間に休憩が入って2時間半ほどの上映時間だ。

 堤幸彦監督の『2LDK』は同じ事務所に所属して会社の支給する同じマンションで同居している若い女優ふたりが、同じ映画のオーディションを受けてその結果発表を待つ間に、それまで抑圧されてきた感情を爆発させて殺しあうに至るという話。登場人物は野波麻帆と小池栄子のみ。会話の文体とそれぞれの内面の声を併走させ、少しずつドラマのテンションを上げていく様子は見事。単に右肩上がりに感情が高まっていくのではなく、途中に小休止を入れたり、一時的な和解状況を作ったり、それでいてそれらが更なる感情ヒートアップへの布石になるという構成の巧みさ。上手い! 殺し合いにまでエスカレートするかどうかはともかくとして、「こういうのって、ありそうだなぁ……」と思わせるリアルな会話や心の声にニヤニヤさせられてしまう。『Jam Films』に収録されている堤監督の短編「ひじき」にも通じる、シュールな可笑しさに笑わせられました。

 それに比べると北村監督の『荒神』はイマイチ。戦場から落ち延びたひとりの武者が、逃げ込んだ荒れ寺の主である「荒神(あらがみ)」もしくは自称・宮本武蔵と戦う羽目になる話だ。主演は大沢たかおと加藤雅也。主人公たちが戦い始める後半までがやたらと長い。ここにはもう少しアクセントが必要だろう。僕はこの前半が退屈でならない。しかしひとたび戦いが始まると、そのスピード感と重量感に目を見張ることになる。主演に加藤雅也がいるせいで、僕はこの映画に『魔界転生』のイメージがダブってしょうがない。(加藤雅也は『魔界転生』で荒木又右衛門を演じている。)剣を振るいながらすれ違いざま相手に当て身を食らわせるダイナミックな立ち回りは、チャンバラとしても第一級のものだったと思う。

 『2LDK』はコメディで『荒神』はアクションが主体の映画なので、純粋にふたつの作品を比較することは意味がないようにも思うが、映画作品としてのまとまりで『2LDK』に軍配が上がるように思う。登場人物を完全に2名に限定し、他の人物は電話の声だけで姿を現さないという研ぎ澄まされたシンプルさが、この映画の力強さになっていると思う。その点『荒神』はまだまだ贅肉を絞れるし、もっとボリュームアップできるところもあるように思う。男同士の戦いに女がひとりからむという人物配置は、内田吐夢監督が中村錦之助主演で撮った『真剣勝負』が参考になったかも。

10月4日公開予定 テアトル池袋、渋谷シネパレス
配給:ザナドゥー 宣伝:オフィス・エイト
(2002年|「2LDK」1時間9分+「荒神」1時間19分|日本)
ホームページ:
http://www.duel-movie.jp/

DVD:DUEL〜対決/「2LDK」VS「荒神」
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