ブラックマスク2

2003/08/08 東映第2試写室
ツイ・ハークとユエン・ウーピンのコンビ作にしては低調すぎる。
前作とのつながりなし。中身は安っぽい怪獣ショーだ。by K. Hattori

 黒いマスクの正義の味方「ブラックマスク」が悪の組織と戦うヒーローものだが、ジェット・リーが主演した『ブラック・マスク』とは似ても似つかない映画になっている。共通するのは黒装束と黒のマスクというコスチュームだけ。原案・製作・監督はツイ・ハーク。アクション監督はユエン・ウーピン。だがやっていることは三流の怪獣ショーだ。

 今回ブラックマスクと戦うのは、動物の遺伝子を人間に注入して改造人間を作ろうとするマッドサイエンティスト、モロック博士だ。(この名前はウェルズの古典SF小説「モロー博士の島」から取られているのだろう。)彼はプロレス団体のプロモーターと結託して、選手たちに無断で動物の遺伝子を注入し、強力なパワーを持った怪物に変身させる。この陰謀を知ったブラックマスクも、動物遺伝子を注入されて人間の理性を奪われたモンスターに変身してしまうのだ。

 物語としてはこの他にも、ブラックマスクの生みの親である秘密組織が彼を捕えようとする話などがからむのだが、この秘密組織の動きとモロックたちのたくらみがうまくリンクしていない。映画はあちこちからアイデアを引用してパッチワーク状に切り張りしてあるだけで、全体としては統一感のないものになっていると思う。映画を観ていても「なぜそうなるの?」という飛躍や、「どうしてそうなるの?」という説明不足が多すぎる。

 これは『ブラック・マスク』の設定を少し借りて、『X-メン』や『ハルク』がやってみたかっただけではないのだろうか。ブラックマスクの感情が激昂すると、緑色のネコに変身してしまうという場面には開いた口がふさがらない。モロック博士は最後にドゥエル教授と同じ有様になり、こうなるともう笑うしかないのでね……。他にもいろいろなアイデアを、古いSF小説や映画から生のまま借りてきているように思う。

 主演のアンディ・オンは真面目一方で、ジェット・リーのようなカリスマ性もなければユーモアも感じられない。身体はそれなりに動いているが、演技者としてはまだまだ未知数だと思う。他の俳優たちは全員が大根の大芝居。

 監督としては同時期に撮っていた『蜀山傳』や『老夫子』に一生懸命だったのかもしれないけど、この映画はちょっとひどすぎると思う。(『蜀山傳』は日本公開されないのかなぁ……。)『ブラック・マスク』が傑作だったとは思わないけれど、少なくともそこそこ楽しめる映画にはなっていたと思う。アクションシーンにちゃんと見せ場もあった。でも今回の映画は、いったいどこが見どころなんだかさっぱりわからない。お金になるので、とりあえず形だけは作ったというだけの作品ではないのか。キャラクターとしてはそれなりに出来上がっているのだから、今回も原案とプロデュースだけ担当して監督を他に任せたほうが面白いものになったように思う。あまりにも手抜き過ぎるよ。

(原題:BLACK MASK2 CITY OF MASK)

9月13日公開予定 新宿東映パラス3
配給:メディア・スーツ、ツイン
(2002年|1時間42分|香港)
ホームページ:
http://www.mediasuits.co.jp/

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