復活

2003/07/25 東宝第1試写室
罪の許しを請う魂の旅を描いた大河ドラマ。骨太のドラマは見ごたえアリ。
トルストイの代表作をタヴィアーニ兄弟が映画化。by K. Hattori

 『グッドモーニング・バビロン!』のタヴィアーニ兄弟が、トルストイの長編小説を映画化した大河ドラマ。原作サイレント時代から何度も映画化されている人気作品。今回の映画は3時間7分という時間を使って、ネフリュードフとカチューシャの愛の流転を堂々と描き出している。物語の数カ所に回想形式を用いて、劇中の時間を主人公ふたりの再会から別れまでに集中させている。「いったい何が起きたのか?」という過去に対するミステリーの要素を劇中に持ち込まず、主人公たちのドラマを常に正面から描いて「これから先どうなるか?」というストーリーの面白さだけで最後まで押し切る力強さ。

 物語は主人公のネフリュードフが、殺人事件の陪審員として裁判所を訪れたところから始まる。だが被告席に座る貧しい娼婦の名前を知ると、彼の顔はショックで青ざめ身体はこわばった。彼女が淪落する原因を作ったのは、間違いなく自分だったからだ。10年前の大学時代、休暇で訪れた叔母の屋敷で出会った美しい小間使いのカチューシャ。3年後に再び彼女と会った彼は、欲望のままに彼女を誘惑して強引に関係を結び、そのまま彼女を捨ててしまった。彼女はそれが原因で叔母の屋敷を追われ、今こうして娼婦にまで身を落としている。裁判手続きのミスで実刑判決を受けた彼女を救うことで、自分の過去の罪を償いたい。ネフリュードフは上級審のために家財を処分して弁護士を雇い、彼女の許しを請うために結婚を申し込むのだが……。

 映画は前半がネフリュードフの贖罪を強く前に押し出した物語になっていて、後半は彼の献身を受け入れながらも政治犯の青年シモンソンとの結婚を決めるカチューシャの物語になっている。ふたりの主人公のふたつの物語は、うまく噛み合わないまま交差していく。途中で明確なドラマのバトンタッチがあるわけではないが、ネフリュードフがゆるやかに舞台の中央から後退し、かわりにカチューシャがスポットライトの中心に出てくる感じだ。この交代はカチューシャのシベリア行きが決まり、ネフリュードフがそれを追うため同じ列車に乗り込むシーンで決定的になる。ここで物語の主軸が、完全にカチューシャの側に移ってしまうのだ。

 ネフリュードフはカチューシャに許されて自分自身の心の平安を得たいと願い、すべてを捨てて彼女を助けようと奔走する。彼女を救うことで、彼は自分が心安らかになりたいのだ。カチューシャはそんな彼の気持ちを見透かして、偽善者だと彼を罵る。だがカチューシャに拒まれ続けたネフリュードフの思いは、やがて彼女と自分の個人的な救済を求める気持ちから、別次元のものへと質的な変化を遂げる。抑圧された者や虐げられた者たちに対する同情や共感が、彼を別の人間へと作り変えていくのだ。そんな彼を見て、カチューシャもまた変わっていくことになるのだ。ふたりの別れは自然の成り行きに思える。

(原題:Resurection)

秋公開予定 有楽町スバル座、新宿武蔵野館
配給:アルシネテラン
(2001年|3時間7分|イタリア)
ホームページ:
http://www.alcine-terran.com/

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DVD:復活
原作:復活(トルストイ)
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