ルールズ・オブ・アトラクション

2003/07/16 イマジカ第2試写室
アメリカの若手俳優が総出演で描かれる80年代の青春。
監督は『キリング・ゾーイ』のロジャー・エイヴァリー。by K. Hattori

 映画化された「レス・ザン・ゼロ」や「アメリカン・サイコ」の作者ブレット・イーストン・エリスの同名小説を、『キリング・ゾーイ』のロジャー・エイヴァリー監督が映画化した80年代の青春ドラマ。一流大学に通う裕福な若者たちが、授業そっちのけでドラッグとアルコールとセックスに明け暮れる様子を描写していくのだが、圧倒的な風俗描写の中から立ち上がってくる空虚な空気感がやけにリアル。しかしなぜこの話を、原作発表から15年もたってから映画化しなければならないのかがよくわからない。

 ロジャー・エイヴァリーはタランティーノの『パルプ・フィクション』で、アカデミー脚本賞を受賞している才人。しかし94年に『キリング・ゾーイ』で監督デビューしてからは後が続かず、96年にテレビ映画『MR. STITCH/悪魔の種子』を監督してからは脚本やプロデュースに専念。この『ルールズ・オブ・アトラクション』は彼にとって3本目の監督作であり、2本目の劇場映画作品ということになる。『キリング・ゾーイ』の時は「タランティーノの盟友」という紹介をされたエイヴァリーだが、今回はそうしたビッグネームの後押しもなく(既にタランティーノがビッグネームでなくなっているという現実もあるけれど)、監督として真価を問われる作品だと思うのだけれど……。

 物語は同じ大学に通うローレン、ショーン、ポールの3人を軸に展開する。あるパーティでこの3人が別々の相手とベッドインし、それぞれにこっぴどい目に遭うところから映画はスタート。ここから物語は一気に数ヶ月前に逆戻りし、3人がどのような道を経て、このパーティにたどり着いたかを見せるという構成だ。冒頭のパーティシーンではまるで他人同士のように別々に行動していた3人が、それまでにいろいろな形で接触を持ち、感情の交流や行き違いがあったということが明らかになる。

 かくして物語は、古典的な恋のすれ違いに落ち着く。好きな人には振り向いてもらえず、まったく対象外の相手から好かれても、それにまったく気づいていない残酷な関係。ヴィクターを好きなローレン、ローレンを好きなショーン、ショーンを好きなポール、でもポールは誰からも愛されず、ヴィクターは誰も愛してない。この関係には落ち着きどころがない。どこからも切り離されて、宙ぶらりんに空中を漂っている。

 ローレンの処女喪失シーンに代表される辛辣なエピソードや、ローレンとショーンが出会う廊下のシーンに観られるハイテク撮影、ヴィクターのヨーロッパ旅行を数分で語る場面など、監督のセンスを感じさせるシーンも数多くある。しかしそれ以前に、「なんで今さら?」という印象のほうが強い。映画に描かれた時代をリアルタイムで知っている世代としては、今の若い俳優を使って当時の世相を再現することにどんな意味があるのかという疑問を持つ。

(原題:Rules of Attraction)

秋公開予定 シネクイント
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 協力:エスピーオー
(2002年|1時間48分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.rules-jp.com/

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DVD:ルールズ・オブ・アトラクション
サントラCD:Rules of Attraction
原作:ルールズ・オブ・アトラクション(ブレット・イーストン・エリス)
原作:Rules of Attraction (Bret Easton Ellis)
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