変身パワーズ

2003/06/18 SPE試写室
ダナ・カーヴィが特殊メイクとモノマネ芸でひとり何役にも挑戦。
変装とモノマネで世界を救う一家の物語。by K. Hattori

 遠い昔から一族に伝わる変装技術と能力を使い、世界平和に貢献してきたディスガイジー家。だが今から20年前、当主だったファブリッツオはそんな一家の使命と宿命にほとほと嫌気がさし、変装に関わる一切を封印してしまった。その後生まれた長男ピスタチオは、自分の体に流れている「変身の達人」の血を意識しないまま、時に猛烈に変装やモノマネをしたいという衝動に駆られることに戸惑っていた。だがある日、ピスタチオの目の前で両親が誘拐されるという事件が起きる。犯人のボウマンは、全米に保管されている数々のお宝を盗み出すため、ファブリッツオの変装術を利用しようとしていたのだ。ひとり残されたピスタチオは祖父の手ほどきを受けながら、天性の変装術を使って両親を救出しようとするのだが……。

 主人公ピスタチオを演じるのは『ウェインズ・ワールド』のダナ・カーヴィ。映画の見どころは、ほとんど何の脈絡もないまま次々飛び出すピスタチオの変装とモノマネ芸。なぜその変装が必要なのか、その変装にどれだけの効果があるのかなど、合理的な説明は一切ないまま、「どうだ、面白いだろう!」とばかりに次々出てくる奇妙な扮装の数々。またファブリッツオが変装した有名人という設定で、その有名人本人が出てくるのも見どころといえば見どころ。ただし登場するのは、ボー・デレク、マイケル・ジョンソン、ジェシカ・シンプソン、ジェシー・ベンチュラなど、カメオ出演のセレブリティとしてはちょっと弱いかもしれないけど……。それはともかく、父親のファブリッツオは完璧な扮装(本人出演とCGの合成)で、息子のピスタチオは特殊メイクとモノマネ芸という使い分けが面白い。これが同じパターンになってしまうと、観ていても飽きてしまうだろうし、ダナ・カーヴィの芸を殺してしまうと思う。

 物語は正直言ってどうでもいい。荒唐無稽な変装テクニックを、ニヤニヤ笑いながら観ていればそれでOKという映画なのだ。映画の中でひとりの俳優が複数のキャラクターを演じるという意味で、この映画はギネス級ではないだろうか。何しろ主人公が化けるのは人間だけではない。チェリーパイに化けたかと思えば、次の瞬間には牛糞と草むらに化けて地面と同化してしまうすごさ。モノマネの中にはブルース・リー(だよね)とか、アル・パチーノ(たぶん)とか、ジョージ・ブッシュ(これは間違いない)などの有名人もいるのだが、謎のインド人とか、骨董マニアのオバサンとか、ドイツの税務署員とか、スコットランドヤードの気取った刑事とか、即興で作ってしまったようなキャラクターも多い。

 やたらしつこいエンディングなども含めて、とにかく次々に出てくるアイデアをそれを惜しみなく全部映画にぶち込んでしまったのがよくわかる。映画作品としてのバランスは悪いのだが、そのぶっ壊れ具合も含めて楽しむ映画だろう。

(原題:The Master of Disguise)

7月5日公開予定 シネマメディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(2002年|1時間20分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/henshin/

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DVD:変身パワーズ
サントラCD:The Master of Disguise
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