ドリームキャッチャー

2003/05/12 新宿ミラノ座
山小屋に集まった4人の男たちが人類滅亡の危機に巻き込まれる。
スティーブン・キング原作の大型ファンタジー映画。by K. Hattori

 スティーブン・キングの同名小説を、ローレンス・カスダン監督が映画化した2時間15分の大作ファンタジー。映画の予告編を観る限り、なにやら物々しいアクションホラー映画風。しかし映画が始まってみると、超能力めいた不思議な力を持つ男たちの友情を描いたドラマが始まり、回想シーンになると『スタンド・バイ・ミー』になる。しかしその実態は、異星人の侵略から地球を守ろうとする男たちの戦いを描く、典型的なB級SF映画だった!

 「どんな映画なんだろう」と観客をワクワクドキドキさせておいて、中盤で「じつは宇宙人の侵略でした」とズッコケさせるあたりは、ヒット作『サイン』にも似ている。主人公の男が未知の生物に出会って便所で腰を抜かすシーンを見て、僕も思わず腰が抜けるかと思った。便所の床をはいずっていたのは、鋭い歯がギッシリと生えた巨大なミミズ(もしくはナマコ)のような生物。そして背後から伝わるただならぬ気配に振り向いた男が見たものは、キューピー人形の出来損ないのような姿をした巨大エイリアンだった! 彼の名前はミスター・グレイ君。なんとこの間抜けなキューピー人形が、かれこれ25年もの間、地球の安全と人類の生存を脅かしているのだというから驚きだ。

 原作は新潮文庫で4分冊になっている長編で、映画は2時間以上の時間を費やしても到底その全貌を映像化しきっているわけではないだろう。僕は原作を読んでいないけれど、その程度のことはわかる。原作を映画にする段階で、かなり多くの要素がそぎ落とされて行ったに違いない。しかしそれでも、この映画には独特のキングっぽさが残っている。便器の下でモンスターが暴れまわっているという絶体絶命の危機の中で、なぜか床に散らばった爪楊枝が気になって仕方がないという強迫観念。目の前にある死体を前にして、ビールをラッパ飲みしながらぐずぐずと愚痴り続ける男。そして心の中にある「記憶の倉庫」を、そのまま視覚化してしまうアイデア。テレパシーで相手の過去を言い当ててしまう男なども合わせて、少年時代からの仲間4人組のキャラクターは面白い。

 この映画でつまらないのは、出演者の中でもっともギャラが高かったであろう、つまり誰もが顔と名前を知っている有名俳優が出演する場面だ。モーガン・フリーマンとトム・サイズモアが演じている軍人のシーンは、もっと大胆に刈り込んでしまってもよかったように思う。その分を4人の男たちの友情や絆を描くことに使って、『スタンド・バイ・ミー』的な世界を深く掘り下げていくほうがよかったのではないか。

 軍人役の俳優を無名の人にするだけでも、ドラマの焦点が幼馴染4人組の側に集まったようにも思う。でもそうはできない、興行的な目算というものがあるのだろうなぁ。ちょっとヘンテコな映画でした。

(原題:DREAMCATCHER)

2003年4月19日公開 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2003年|2時間15分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.dreamcatcher-movie.jp/

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DVD:ドリームキャッチャー
サントラCD:ドリームキャッチャー
サントラCD:Dreamcatcher
原作:ドリームキャッチャー
原作洋書:Dreamcatcher
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