X-MEN 2
X-メン2

2003/05/09 日劇1
アメコミ原作の人気シリーズ第2弾は1作目より面白い。
物語の背景になっているテーマも明快だ。by K. Hattori

 アメコミの古典「X-MEN」の映画化第2弾。監督は前作『X-メン』と同じブライアン・シンガーで、ヒュー・ジャックマン以下出演者も前作をそのまま引き継いでいる。シリーズ映画はたいてい1作目の方が面白いものと決まっているが、アメコミが原作になっている映画の場合はどうだろうか。世界観や登場人物など物語の前提条件を紹介する必要がある1作目に比べると、いきなりドラマの核心に入っていける2作目の方が物語のテンポがよくなるメリットもあると思う。僕は今回の映画の方が、テーマもより明確になっていて面白いと思った。

 原作コミック誕生の背景に、アメリカの人種問題がある。人間とミュータントの対立という設定は、そのまま白人と黒人の対立の写し絵であり、人間との共存を目指そうとするミュータントの一派と、人間との対決の中でしかミュータントの自由は得られないとする一派の対立なども、'60年代の黒人運動の2つの流れをそのまま反映しているようにも思う。つまりプロフェッサーXはマーチン・ルーサー・キングであり、マグニートーはマルコムXやブラックパンサーなのだ。それはこの映画の中でも、かなり明確に打ち出されていると思う。映画の導入部でリンカーンの演説が引用されているのは、ミュータント問題と黒人問題を結びつける意図からだろう。映画の中の人類は黒人問題を克服した。だが新たな人種として、ミュータントを抱え込むことになったのだ。

 監督が同性愛者であることを公言しているブライアン・シンガーであることもあり、新しい『X-MEN』シリーズではミュータントと同性愛者が二重写しになる仕掛けが施されている。学校を追われて実家に戻ったミュータントの青年が、両親や家族に自分がミュータントであることをカミングアウトするシーンは痛ましい。息子との再会を喜んでいた両親の表情は、息子がミュータントだと知った途端に驚きと恐怖の表情に変わる。「そんなバカな」「誰の血筋なんだ?」「普通の人間に戻ることはできないの?」。愛する息子は知らぬ間にモンスターに変身してしまった。息子の友人たちもみんなバケモノだ。家族は息子を拒絶する……。おそらくこんな風景は、シンガー監督の周囲にありふれたものだったのだろうと思う。家族に拒絶された者の心の痛み。それを間近に見たものの憤り。これが今回の映画の中心になっている。

 迫害されるミュータントの多くは子供たちであり、迫害するのは大人たちだ。こうすることで映画の中の「ミュータント差別」は、大人と子供の世代間対立のメタファーにも見えてくる。子供たちはいつでも、目の前に立ちふさがる大人たちを乗り越えて成長していく。今回登場したストライカーという男は、成長して力をつける子供を恐怖する大人の代表だ。だが映画の最後に、主人公のローガンは「子供を信じる」と宣言するのだ。これこそが、今回の映画のポイントである。

(原題:X2)

2003年5月3日公開 日劇1他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(2003年|2時間5分|アメリカ)
ホームページ:
http://x2-movie.com/

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