STEAL
スティール

2003/05/01 GAGA試写室
銀行強盗と警察と殺し屋の追いかけっこにXスポーツの要素をプラス。
悪党たちが個性たっぷりで主人公たちが霞みそう。by K. Hattori

 白昼の銀行を襲って大金を奪い、インラインスケートで逃走するやあっという間に姿を消してしまった銀行強盗。リーダーのスリムに、オーティス、ランクに、紅一点のアレックスの4人からなる強盗団は、次に銀行の現金輸送車を襲撃。その中には現金の他に、2千万ドル分の無記名債権も含まれていた。これを現金化できれば、あとは全員が遊んで暮らせる。だがそんな彼らを捕えて、廃棄処分になる高額紙幣の運搬車を襲えと脅迫する謎の男が現れる。スリムたちは嫌々ながら、この男の命令に従うのだが……。

 監督は『TAXi』のジェラール・ピレス。アクションコーディネーターに『TAXi』や『トランスポーター』、007シリーズなどに参加しているミシェル・ジュリエンヌ。主人公スリム役にスティーヴン・ドーフ。女性刑事カレン役にナターシャ・ヘンストリッジ。アクション映画にXスポーツの要素を取り入れるというアイデアは、『トリプルX』や『007/ダイ・アナザー・デイ』など最近のトレンドになっているようだが、この映画ではインラインスケートと高い橋からのスカイダイビングが序盤と中盤の大きな見せ場になっている。

 主人公たちがなぜ金を必要としており、彼らがどんな関わりから危険な強盗稼業に足を踏み入れたのかという説明がやや不足しているように思う。映画冒頭の銀行強盗が最初に彼らが関わった事件ということのようだが、それまで彼らは何をしていたのか。しかしこうした背景説明に時間を割くことなく、最初から「銀行強盗と警察と殺し屋の追いかけっこ」という核心に入ってしまった小気味よさも捨てがたい。くだくだと説明をして2時間の映画を作るよりは、映画の中身にずばりと踏み込んで1時間24分にまとめてしまったほうがいいという判断だろう。

 犯行の動機が不明確であることは、観客が主人公たちに肩入れしにくい要因となる。だがそれを補っているのが、主人公たちを脅迫する連中がいかにも卑劣な悪党であることだ。日頃は教会で子供たちに説教をしながら、裏ではギャングから金をもらって殺し屋をしているリーゼントかつらのサタイヤン。強盗事件捜査の陣頭指揮を取るのは、露骨な女性差別主義者のマグルーダー警部補。謎の脅迫男が送り込んだ見張りの男は黒人差別主義者で、ヘラヘラ笑いながら平気で人を撃ち殺すような奴だ。こうして敵役に個性的な顔ぶれが並ぶと、観客は嫌でも主人公たちに肩入れせざるを得なくなる。

 強盗団内部の人間関係にはいろいろと味付けがされているが、それがあまり人物の魅力につながっていないのは残念。特に紅一点のアレックスは、もう少し活躍してもよかったように思う。スリムの気持ちがアレックスからカレンに移っていく過程をもう少し丁寧に描いてくれると、映画のラストシーンがもう少しキリリと引き締まったと思う。。

(原題:Riders)

2003年公開予定 東宝洋画系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:ギャガ
(2002年|1時間24分|イギリス、フランス、カナダ)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

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DVD:スティール
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