セクレタリー

2003/04/25 GAGA試写室
自傷癖のある女性が弁護士事務所でオフィス調教されてしまう話。
かなりひねったアイデアのラブコメディだが面白い。by K. Hattori

 子供の頃から自傷行為を繰り返していたリー・ホロウェイは、自傷癖が講じて自殺まがいの騒ぎを起こし、しばらく精神科に入院する羽目になってしまった。退院した彼女は自立自活の道を探るため、タイピストの資格を取得して秘書を募集していた弁護士事務所に就職する。事務所のボスであるミスター・グレイはリーに次々つまらない仕事を押し付けるが、それに嫌な顔ひとつすることなく彼女は従い続ける。いつしかふたりの間には、事務所のボスと秘書という関係以上の信頼関係や絆が出来上がっていった。それは「支配と被支配の関係」だ。何でも命令するのが好きなミスター・グレイと、命令されることに心地よさを感じるリー。やがて始まったのは、リーの仕事上のミスに対するお仕置きだった。お尻をたたかれたり、拘束具に緊縛されたりすることに快感を感じるリーは、いつしかミスター・グレイのお仕置きを心待ちにするようになっていくのだが……。

 メアリー・ゲイツキルの短編小説「秘書」(単行本「悪いこと」に収録)を、スティーブン・シャインバーグ監督が映画化した風変わりなラブコメディ。ヒロインのリーを演じているのは、『コンフェッション』や『アダプテーション』に出演しているマギー・ギレンホール。ボスのエドワード・グレイを演じるのは『セックスと嘘とビデオテープ』や『クラッシュ』でも風変わりな性癖の持ち主を演じていたジェームズ・スペイダー。リーのボーイフレンドや家族が脇役として登場するが、基本的にはこのふたりの間で進行していく愛と葛藤のドラマだ。

 主人公のリーとミスター・グレイは、まったくの偶然から自分にとって最良のパートナーとめぐり合ってしまう。支配と被支配、嗜虐と被虐の間で、互いの快楽を共有しあえる関係性。要するにサディズムとマゾヒズムなのだけれど、SMも普通の男女関係と同じで互いの相性というものがあるらしい。リーはミスター・グレイ以外の男性との関係に魅力を感じないし、彼のほうもリーとの関係の中では自分の欲望がどこまでもエスカレートしていくのを止められない。ミスター・グレイのあらゆる要求を、リーはどこまでも受け入れてしまうのだ。いつしかふたりの間には愛情が芽生えるのだが、リーが自分の気持ちに一途なのに対し、彼の方はかなり自信がない様子。彼女を傷つける前に、自分が身を引くほうがいいと考えたりする。この気持ちのすれ違いの切実さ!

 この映画はセックスそのものを描いているわけではないけれど、男女の「親密な関係性」というテーマは、あらゆる男女関係にも当てはまるテーマだろう。誰だって自分にぴったりのパートナーと出会いたいと思っている。でもそんな相手と本当に出会ったとき、その関係性の中に迷わず飛び込んでいけるか、それとも少し躊躇してしまうか……。ミスター・グレイの慎重さ、あるいは臆病さが、むしろ人間にとって普通の行動かもしれない。

(原題:Secretary)

2003年夏休み公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:ギャガ・コミュニケーションズGシネマグループ
宣伝:ギャガGシネマ風
(2002年|1時間51分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.gaga.ne.jp/

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DVD:セクレタリー
サントラCD:Secretary
原作本:悪いこと(メアリー・ゲイツキル)
原作洋書:Bad Behavior (Mary Gaitskill)
関連DVD:スティーブン・シャインバーグ監督
関連DVD:マギー・ギレンホール
関連DVD:ジェームズ・スペイダー

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