ダブル・ビジョン

2003/04/18 ソニーピクチャーズ試写室
台北で起きた謎めいた連続殺人解決のためFBI捜査官が台湾に渡る。
道教の伝説をモチーフにしたオカルト・サスペンス。by K. Hattori

 台北市内で起きた謎めいた連続殺人事件。最初の被害者は、冷房を止めた蒸し風呂のようなオフィスで体中を凍りつかせて溺死。次の被害者は火の気のない自宅マンションで、「部屋が燃えている」という消防への電話をかけた直後に焼死。次なる被害者は市内教会の神父で、自室で就寝中に生きながら腹を割かれて腸を抜かれ、一度洗った腸をもう一度腹に戻してから縫い合わされて死んでいた。神父が外国人だったことから台湾警察は国際問題になることを懸念し、FBIから猟奇犯罪事件専門家ケビン・リクター捜査官をオブザーバーとして招く。台湾警察国際課のホアン・フォトゥ刑事も通訳として捜査チームに加わった。リクターは殺された神父の腹に残された護符のような文字に注目するが……。

 コロンビア映画がアジア拠点で製作している「ワールドシネマ」の作品で、先行公開された台湾では『ハンニバル』や『レッド・ドラゴン』よりもヒットしたという。物語の舞台は台湾で、監督は台湾人、フォトゥ刑事役のレオン・カーファイが香港人、リクター捜査官役のデビッド・モースがアメリカ人、フォトゥ刑事の妻を演じたレネ・リュウが台湾の人気女優という国際的なキャスト。台湾や中国の民間信仰である道教をモチーフにしたオカルト映画だが、そこにFBI捜査官のプロファイリングや科学捜査という要素がからまっているのがミソ。近代合理主義と前近代的価値観の衝突という構造は、オカルト映画の古典『エクソシスト』と同じものだ。

 アイデアは面白いと思うのだが、それが未整理なまま映画が終わっている部分も多いと思う。その際たるものが、被害者の鼻腔や脳の中から発見されたカビの正体だ。このカビの働きによって、被害者は幻覚を見て錯乱状態に陥るらしい。だが幻覚だけで死体が凍りついたり、焼死体が出来上がったりするのか? 神父の腸を抜いたのは誰? ここに教団の人間が加わっていたとするなら、そもそもカビなんて関係ないんじゃないの? 他の被害者が死んで、主人公だけが生き延びたのはなぜ? 犯人は主人公の刑事に何を求めていたの? 犯人は何を期待して、主人公をたった一人で呼び出したの?

 せっかく新種のカビやFBIのプロファイラーを登場させたのだから、映画の終盤まではとりあえず合理的な科学捜査で押して行って一度事件を解決させ、その上でドンデン返しが来るという構成にしたほうがよかったと思う。FBI流の合理主義で何でも割り切ってしまうリクター捜査官に対し、自分自身の私生活に大きな問題を抱え、人間の持つ「善」や「悪」という問題に敏感にならざるを得ないフォトゥ捜査官はそこまで割り切れないモヤモヤが残っている。リクターの方法で事件が解決し、自分の私生活の問題も先に明かりが見えてきて、これで万事解決かと思われたとき……という筋立てをもっとくっきりと浮き上がらせる方法はあったと思う。

(原題:DOUBLE VISION 雙瞳)

2003年初夏公開予定 シネマスクエアとうきゅう、シネマメディアージュ
配給:ソニーピクチャーズ エンタテインメント
(2002年|1時間50分|台湾、アメリカ)
ホームページ:
http://www.spe.co.jp/movie/worldcinema/doublevision/

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