3 on 3

2003/03/26 KSS試写室
ラッパーのラッパ我リヤが主演したSF風のスポーツ青春ドラマ。
アメコミ調で威勢がいいが、ラストはどうなのよ。by K. Hattori

 そう遠くない近未来。西暦20XX年。金融破綻で日本の政治経済は麻痺し、やがて巨大な権限を持つ独裁政権が誕生した。政府は国民をマインドコントロールするため、Dボールという新種のスポーツ競技をテレビ中継。これはスリー・オン・スリーのバスケと、ルール無用の格闘技を組み合わせたもの。高額の賞金と掛け金が飛び交うDボールに、ある日とんでもないスーパースターが登場する。そのチーム名は「マスク・ド・ラッパ」。孤児院育ちの3人組は、歌とバスケが大好き。歌詞が政府批判だと一度は死刑判決を下されるが、何者かに助けられて荒廃した世界に世界に戻ってきたのだ。快進撃するマスク・ド・ラッパだったが、やがて彼らの前に最強の敵が現れたのだが……。

 主演は人気ラップグループのラッパ我リヤ。監督は『発狂する唇』や『血を吸う宇宙』の佐々木浩久。脚本は北村龍平監督の『VERSUS』と『ALIVE』で共同脚本や第2班監督を勤め、初監督作『地獄甲子園』の公開も控えている山口雄大。佐々木作品でお馴染みの下元史朗や三輪ひとみも、脇役出演している。僕は神父に扮した下元史朗が三輪ひとみを犯しまくる場面が当然あるものと期待していたのだが、そうしたシーンがなかったのはちょっと残念。それにしても三輪ひとみは、いつもヘンテコな役ばかりだなぁ……。

 映画はビデオ撮りの低予算作品で、全体の印象はチープきわまりない。でも作り手のやりたいことがはっきりしていて、観ていて楽しい映画になっているのはいい。この映画の「安さ」と「怪しさ」は、映画冒頭で神父とシスターが3人の赤ん坊を拾うシーンから全開。この3人がどこから現れたのかさっぱりわからないのだが、子供時代、少年時代、青年になった現在までを、何人かの役者でつないで見せるあたりは、日本映画には珍しく丁寧な描写だったかもしれない。
 
 ただしこの映画、楽しさは伝わってきても、言わんとしていることが今ひとつ不明瞭だとも感じる。マスク・ド・ラッパの3人はどこからやって来て、独裁政権下の日本でいったい何をやろうとしているのか。彼らはそこで誰を救い、世界をどう変えようとしているのか。あるいは彼らに、そうした力は何一つ備わっていないのか。これがどうもわからない。
 
 マスク・ド・ラッパの前に立ちふさがるのは、かつて彼らと戦ったことのあるアゼルの3人組。彼らと正々堂々戦うことで、マスク・ド・ラッパの周囲で世界は少し変わり始める。隠された真実の過去が明らかになり、敵は本腰を入れて彼らを潰そうとする。それに対して、主人公たちがどうなったのか? 押しつぶされてしまったのか? それとも圧力を跳ね返したのか? ここで結末をぼかしても、『明日に向かって撃て!』のような余韻は生まれない。どうせ荒唐無稽なマンガなのだから、ここは爽快に、主人公たちには暗い世界のすべてをぶち壊してほしかった。

2003年4月26日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:KSS
(2003年|1時間26分|日本)
ホームページ:
http://kss-movie.com/3on3/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:3 on 3
サントラCD:3 on 3
関連CD:ラッパ我リヤ
関連DVD:佐々木浩久監督
関連DVD:下元史朗
関連DVD:梨花
関連DVD:三輪ひとみ

ホームページ

ホームページへ