ボイス

2003/03/19 ブエナビスタ試写室
持つ人を殺す謎の携帯電話を巡るミステリアスな韓国製ホラー映画。
脚本の構成に工夫があって最後まで楽しめる。by K. Hattori

 韓国製のホラー映画。要するに『リング』の亜流なんだけど、そこに一工夫も二工夫もしてあって、なかなか楽しく観る事ができた。携帯電話と幽霊譚を結びつけるというのは、ビデオテープと幽霊を結びつけた『リング』のバリエーションと解釈できるし、『リング』の中にもビデオを見た直後に電話が鳴るというエピソードが既にある。ハリウッドで再映画化した『ザ・リング』に至っては、タイトルを「電話が鳴る」という意味だと思っているのではないかと思うほど、電話の呼び出し音にこだわっていた。この映画『ボイス』は原題が『Phone』で、最初から電話を中心にして物語を展開している。

 女性ジャーナリストのジウォンは、援助交際の実態を告発したレポートを発表してからさまざまな脅迫を受けるようになる。身の危険を感じたジウォンは携帯電話の番号を変更し、親友ホジュンと彼女の夫が所有する郊外の一軒家を借りて引っ越すことになった。だが引越し直後から、彼女の周囲には不思議なことが次々起こり始める。携帯電話にかかる、着信履歴のない電話。その声を聞いたホジュンの幼い娘ヨンジュは、それ以来情緒不安定になって時折奇声を上げたり、母親に凶暴に振舞ったりするようになってしまった。携帯の謎を調べていたジウォンは、その携帯番号が既に何人かの手を経てきたものであり、しかも前の持ち主たちが全員死亡したり失踪したりしていることを知る。いったいこの携帯電話に、どんな秘密が隠されているというのだろうか……。

 この映画が目をつけたのは、解約された電話番号が次々に別の契約者へと引き継がれていくという仕組み。携帯や電話を新規契約した際、前の持ち主あての通話を受けた経験を持つ人は多いと思う。「前の持ち主はなぜ電話を解約したのだろう?」「なぜ解約して番号が変わったことを連絡しないまま放置していたのだろう?」などと考えると、そこに何かしらの物語や因縁を感じることもある。おそらくこの映画の発想の原点は、そんな誰もが持つ疑問にあったのではないだろうか。

 こうしたホラーものでは、小さなドラマが大きな世界に広がっていくのがひとつのパターンになっている。例えば家庭内のいざこざが、サタンの復活やハルマゲドンにつながるとか、そういうパターンが非常に多いのだ。ところがこの映画はそれとまったく逆。無作為に人を殺していく呪いの電話や、社会問題になっている援助交際やジャーナリストへの脅迫といった話から、物語は女子高生をからめた男女の愛憎問題、そして家庭内の母と娘の葛藤といったパーソナルな部分へと着地していく。話としては尻すぼみなのだ。

 だが映画は回想シーンを巧みに使って、閉じていく物語に時間と空間の広がりを与えている。ドラマの風通しがよくなって、狭苦しい感じが軽減されるのだ。ただしこの終盤は面白さと反比例して、恐くなくなってくるのだけれど。

(原題:Phone)

2003年4月26日公開予定 渋谷東急他・全国松竹東急系
配給:ブエナビスタ インターナショナル(ジャパン)
(2002年|1時間42分|韓国)
ホームページ:
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