SF Short Films

2003/02/19 映画美学校第1試写室
中野裕之監督が言うところの「ピース」がわかる人には面白い?
僕にはさっぱり面白さが理解できません。ダメ。by K. Hattori

 『SF サムライ・フィクション』『SF ステレオ・フューチャー』に続く、中野裕之監督の『SF』シリーズ第3弾。今回は中野監督の他に芹澤康久・ピエール瀧・安藤政信らも監督として加わった、オムニバス風のショートフィルム集になっている。全編ビデオ撮り。中野監督は全体のプロデュースを担当しているようだ。一部に熱心なファンがいるらしい中野監督だが、僕は『SF サムライ・フィクション』も『RED SHADOW 赤影』もまったく面白いと思わなかった。(残念ながら『SF ステレオ・フューチャー』は未見。)それがどういう理由なのか、今回ようやくわかったような気がする。要するに僕は、中野監督の作り出す「ピース」な雰囲気ってヤツがまったくダメなのです。

 この映画は一応短編集ではあるのだが、そのひとつひとつは「短篇映画作品」としての切れ味に乏しい。『パルコ フィクション』や『Jam Films』のような面白さを期待すると、まるで期待はずれもいいところなのだ。ひとつひとつの作品に、起承転結のまとまりがない。ひとつひとつのエピソードは10数分から20数分なのだが、それだけの時間をかけても、およそ物語らしい物語がほとんど語られていないものばかりと言えるだろう。

 こうしたことは、この映画が「短編集」として出来損ないであることを意味しているのか? 中野監督も今回加わった他の監督たちも、まるで映画を撮るに値しないヘタッピィばかりということなのか? いやこれは、中野監督たちが狙いすました表現なのだ。このユルユルの感じが「ピース」ってことか。

 映画の中には、面白いアイデアがいろいろ入っているの。会社をクビになって商品券でバイト代を現物支給される話とか、会社勤めを辞めて1畳二間で家賃8千円の部屋に暮らしている中年男の話とか、悩める現代人を相手にした「決断屋」という商売とか、超スローモーに時間が流れていく千葉の風景とか、そこを格にしてドラマを作っていけばちゃんとした「短篇映画作品」ができるに違いないと思えるものもある。ところがこの映画は、そうした中心軸を離れて映画を膨らましていく。そのはずしっぷりが、ピースなのか?

 出演者は麻生久美子、安藤政信、村上淳など『RED SHADOW 赤影』のメンバーが中心。僕は『赤影』もまったくダメダメだと思っているので、今回の映画もまったくダメダメだ。麻生久美子がどんなに可愛くても、ダメなものはだめ。

 僕は結局、試写室や映画館で「ピース」が味わいたいんじゃない。僕は試写室や映画館で「映画」が観たいんだ。骨のない軟体動物のような「ピース」など、僕はまったくの願い下げ。骨組みのがっしりした、ちゃんとした映画を作ってくれと言いたい。この短編集よりは、映画学校の卒業制作の方が面白いよ。少なくともそこには、「映画を作ろう」とする意思がある。

2003年3月8日公開予定 テアトル池袋(レイト)
配給:GAGAコミュニケーションズ
(2003年|1時間59分?|日本)
ホームページ:
http://www.peacedelic.co.jp/ShortFilms/

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