アイ・スパイ

2003/02/05 ガスホール
往年のTVシリーズをエディ・マーフィとオーウェン・ウィルソンでリメイク。
話もギャグもチグハグで笑えないスパイ・コメディ。by K. Hattori

 '60年代にビル・コスビーとロバート・カルプ主演で人気を集めたTVシリーズを、エディ・マーフィとオーウェン・ウィルソン主演でリメイクしたスパイ・コメディ映画。監督は『ドクター・ドリトル』でもマーフィと組んでいるベティ・トーマス。TVシリーズを映画化した成功例としては、これまでにも『ミッション:インポッシブル』や『チャーリーズ・エンジェル』などがあったわけだが、今回の『アイ・スパイ』はとても成功とは思えない。これはオリジナル版と比べてどうこうという以前の問題だと思う。

 この映画はそもそもキャスティングや設定に疑問がある。エディ・マーフィ演じるケリー・ロビンソンは、現在57連勝中の世界ミドル級チャンピオンという設定。しかしマーフィの肉体はとても現役プロボクサーには見えないし、この役がプロボクサーでなければならない物語の上での必然性もあまりない。敵陣に乗り込むために世界的な有名人が必要だということなら、職業は歌手でも映画スターでもベストセラー作家でも映画監督でもよかっただろう。あえてボクサーに設定するからには、ボクサーならではのエピソードやギャグをたくさん作ればいいのに、この映画はそうした見せ場をちっとも準備できていない。

 主人公たちが追うのは、レーダーなどの感知器にも引っかからず、肉眼でも見えない特殊な偽装を施した最新戦闘機。この偽装装置は『プレデダー』のスーツや『攻殻機動隊』に出てきた光学迷彩みたいなもので、『007/ダイ・アナザー・デイ』では同じ処理が自動車に施してあった。こうした装置が物語の中心にデンと据え付けられているなら、この装置を使った見せ場をいくつか用意しておくのが定石だと思う。観客はこの最新戦闘機が、姿を消して飛行する活躍ぶりが見たいのだ。観客が観たいものを観せるのが、映画製作者の義務じゃないのか? だがこの映画では、この飛行機がほとんど活躍しない。こういうのを、宝の持ち腐れというのです。ちょっと考えれば、この飛行機を使ったギャグが10通りぐらいは考えられるだろうに。

 オーウェン・ウィルソンは『エネミー・ライン』でいい芝居を見せてくれたが、今回の映画は相手役のエディ・マーフィにまったく食いついていけないまま終っていたように思う。エディ・マーフィのリズム感と、ウィルソンのリズム感がまったくかみ合っていないようなのだ。せっかちで早口のマーフィとコンビを組ませるなら、相手はマーフィと同系のせっかち早口タイプか、逆におっとりノンビリしたウスノロタイプにするしかない。その点でウィルソンは中途半端だったように思う。優秀なのかバカなのか、よくわからないのだ。

 ヒロインを演じるのはファムケ・ヤンセン。悪くはないけど、僕は個人的に、私生活でウィルソン夫人のジーナ・ガーションの方が好みですけどね……。

 ※注:オーウェン・ウィルソンとジーナ・ガーションが結婚したというのは、どうやら誤った情報だったようです。この当時は周知の事実とされていたんですが、現在では当人たちのプロフィールにそのような情報はありません。どこからこんな情報が出てきたのかは謎です。(2007/09/10)

(原題:I SPY)

2003年GW公開予定 日比谷みゆき座他・全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(2002年|1時間36分|アメリカ)
ホームページ:
http://www.ispy.jp/

Amazon.co.jp アソシエイト

DVD:アイ・スパイ
関連DVD:I SPY / TV Show
関連DVD:ベティ・トーマス監督
関連DVD:エディ・マーフィ
関連DVD:オーウェン・ウィルソン
関連DVD:ファムケ・ヤンセン

ホームページ

ホームページへ