首領(ドン)への道
劇場公開版

2003/02/05 東映第1試写室
人気ビデオシリーズの劇場公開版。主演は清水健太郎。
絵作りの丁寧さが物語に重量感を与えている。by K. Hattori

 ビデオ市場向け映画の世界で人気シリーズとして定着している清水健太郎主演の『首領への道』を、ビデオ版とほぼ同じメインスタッフとキャストで映画化した劇場公開版。ただしビデオに比べると、こちらはキャストがずっと豪華になっているようだ。原作は村上和彦の劇画「日本極道史(昭和極道史)・首領への道」。今回製作総指揮も務めている原作者の村上和彦は、その世界の中で、講演、儀式・行事指導、杯事媒酌人なども手がける著名人らしい。今回は映画の中で、手打式の媒酌人「村上一家総長・村上和彦」を演じている。

 物語はひとりの若いやくざ桜井鉄太郎が組織の中で頭角を現し、ついに一家の長になるまでを描く立身出世物語。基本的には実録調なのだが、『仁義なき戦い』やその後の実録やくざ映画にあるような、ギラギラとした欲望と凄惨な暴力が前面に出るバイオレンス映画ではない。むしろこの映画は、実録やくざ映画以前の仁侠映画と同じ匂いがする。描かれているのは「渡世の道」「仁侠道」だ。劇中で小林旭演じる大親分が、主人公を諭すように言う「俺たちはやくざだ。暴力団じゃない」という台詞が、この映画のコンセプトを明確に言い表しているように思う。多くの実録やくざ映画が「暴力団抗争」を描いているのに対して、この映画は「渡世人の生き方」を全面に出してくる。

 島田組の組員・桜井鉄太郎は若い頃イケイケの武闘派だったが、ライバル組織・白虎会との小競り合いで兄弟分の金沢がひとり罪をかぶって獄に下ると、自分は組と親交のあった三田村親分のところに預けられて男を磨くことになる。やがて組に戻った桜井は一触即発の危機状態にあった島田組と白虎会の紛争を収め、島田組の幹部に抜擢されるのだった。それから数年。島田組の組長が急死したことで、若頭の桜井と古参幹部たちの対立が表面化する。「跡目相続のことで身内の血を流したくない」と言う桜井だったが、彼の舎弟となっていた白虎会二代目・越智や、三田村組長の後押しもあり、桜井はとうとう組の継承を内外に宣言。舎弟頭の梶原一派との確執はさらに激しいものになる。

 石原興監督はビデオ版も手がけているが、もともと「必殺」シリーズなどテレビ時代劇のキャメラマンとして知られる人。映画監督としては『必殺/三味線屋勇次』を撮っている。この映画でも影を巧みに使った絵作りが随所に見られ、それがエピソード盛りだくさんの映画にどっしりとした重みを与えている。実録と任侠ものの中間にあるようなこの映画の世界を、光と影のコントラストでひとつのトーンにまとめ上げているのはお見事。この重量感がなければ、この映画は調子のいい立身出世物語になってしまったかもしれない。

 主人公の桜井は仁侠道の筋目を通して陽の光の中を歩んでいく男だが、彼に寄り添うようにダーティな仕事を受け持つ越智というキャラクターが面白い。白竜はこの役にぴったりだ。

2003年3月1日公開予定 新宿トーア、浅草東映パラス・他
配給:村上劇画プロ、シネマ・クロッキオ
(2002年|1時間55分|日本)
ホームページ:
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DVD:首領への道/劇場公開版
原作:日本極道史・首領への道
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