OKITE
やくざの詩
2003/01/23 東映第1試写室
松方弘樹の初監督作。主演は加藤雅也と吉川晃司。松方も出演。
初監督作にしては初々しさもなく、単にヘタな映画。by K. Hattori
ベテラン俳優・松方弘樹の初監督作品として、撮影中からさまざまなメディアで紹介されていた映画だが、完成品のデキはまったくよくないものだった。自分が主演するのではなく、あえて加藤雅也と吉川晃司という若手を主演に持ってきているのだが、それがはたしていいことだったのか。映画の中で一番生き生きしているのが、結局は松方監督の自作自演シーンや親友梅宮辰夫との共演シーンだったりするのを目の当たりにすると、これは若手など登用せず、むしろ監督と同世代の俳優を中心にドラマを組み立てた方がよかったようにも思う。松方弘樹のコネで東映時代の仲間に片っ端から声をかけて回れば、顔ぶれだけでも面白い映画が出来ただろうに。
映画はストーリーが最初からユルユルで、全体の作りもあまりにもチープ。映画の中には不可解なところが多すぎて、そこを曖昧なままに先へ先へと物語が展開してしまう。中心となる人物の性格付けがしっかり定着しないまま、とりあえず物語だけを進めてしまうのは致命的だ。加藤雅也演じる寺島信二と、吉川晃司が演じる川又和行の関係がそもそもわかりにくい。松方弘樹演じる日下竜夫組長と寺島の関係もわからない。日下の死後、組員たちからバカよばわりされていた実弟の実(演じるのは小沢仁志)が二代目になるというのも、普通に考えれば無理があるように思う。他に二代目候補はいなかったのか。そもそも、大野組が日下組にちょっかいを出してくる理由も不明瞭。最初から関東合田連合が裏で糸を引いていたのだろうか?
映画界での活動が長い松方弘樹とはいえ、映画監督としてはまったくの新人。多少の手際の悪さには目をつぶっても構わない。でもこの映画には、プラスになる点がほとんど見当たらないのだ。「俺はこれがやりたいのだ!」という新しい何かを、新人監督だからこそ見せてほしかった。プレス資料には『綺麗でライトでファッショナブルな、そんなヤクザ映画を目指しました』という松方監督の言葉が紹介されているのだが、これのどこが綺麗なの? どこがライトでファッショナブルなの? 僕にはさっぱりわからない。北野武はアメリカで撮影した『BROTHER』で、山本耀司にデザインさせたスーツを粋に着こなした日系やくざ軍団を見せてくれた。三池崇史は『荒ぶる魂たち』で「女も泣けるやくざ映画」を作ろうとした。そして今回の『OKITE/やくざの詩』だ。どの映画にも出演しているのは加藤雅也だが、今回の映画の彼は『BROTHER』や『荒ぶる魂たち』に比べてどれだけファッショナブルなんだ?
この映画で発揮されている松方弘樹の「作家性」は、登場人物達がしばしば釣りをするという点ぐらいしかないのではないか? 子どもの頃に日下親分から釣り竿をもらった寺島が、その喜びを最後の最後まで忘れられずに日下に付いていくというのも、なんだかねぇ……。