TRICK トリック
劇場版

2002/12/15 新宿文化シネマ1
仲間由紀恵主演の人気テレビシリーズを堤幸彦監督が映画化。
序盤はまずまずだが後半はどんどんショボくなる。by K. Hattori

 仲間由紀恵と阿部寛主演の人気テレビドラマを、劇場版にスケールアップしたもの。監督はテレビ版と同じ堤幸彦。堤監督は以前『ケイゾク』でドラマを映画にしたことがあるが、その時はお遊びが過ぎて何だかよくわからない作品になっていた(と思う)。今回はドラマ版を見ていない僕のような人間にも、なんとなく物語の背景や様子がわかる仕掛けになっていて、映画でいきなりこの作品に出逢ってもそこそこ楽しめた。ただし「そこそこ」なんだけど……。

 腕は一流だがいつも貧乏をしている奇術師の山田奈緒美は、300年に一度大きな災いが起きるという糸節村の役場職員からある依頼を受ける。人々の前で“奇跡”を演じ、それに皆が感心したところで「わたしは神だ。安心しろ、災いは起きない!」と宣言し、村人の不安を解消してほしいとのこと。ところが村に到着してみると、そこには既に自称神様が3人も到着していた。村人は誰が本物かを確かめるため、神様同士でトーナメント戦を開催する。

 映画の序盤は細かなギャグがびっしりと詰め込まれていて、ちゃちな手品も含めてなかなか楽しい。だが中盤以降のミステリーになると、なんだか舞台装置のちゃちさが目について安っぽさが先に立ち、終盤になると物語がスカスカになってきてしまう。竜頭蛇尾。出だしはそこそこ面白かったのに、それが右肩上がりにさらに面白くなっていくのではなく、ひたすら序盤のダラダラした感じが最後まで維持されていくのだ。一応物語そのものは山あり谷ありで、最後には大がかりなクライマックスも用意されている。だがこの映画は、そこで大きく盛り上がってフィナーレを迎えることを拒むのだ。

 もとよりこの映画はそうしたアンチクライマックス路線を狙って作られているのであろうし、この「意図的な白けっぷり」がクールな雰囲気を持っているのも確かだと思う。でもそれを2時間やられるとちょっと辛い。結局これは、意図的なはぐらかしが最後まで続くだけ。美味しい餌を目の前にちらつかせておいて、決してそこに手を届かせない無限に続くおあずけ状態。観る者をひたすらじらせるこのテクニックは、最後の最後に何かしらの結果が出ないと、単に欲求不満が募るだけに終ってしまう。この映画の場合は最後にきちんとしたオチが用意されているのだが、そのオチが観客に提供するカタルシスが、それまでに観客の味わった欲求不満とバランス的に見合わないのだ。

 4人の神様たちが次々に見せる奇跡の数々とその種明かしは面白いのだが、仕掛けはともかくとして、その見せ方は、いかにも種も仕掛けもあるマジックそのもの。もうちょっと奇跡をそれらしく演出する工夫があった方がよかったかもしれない。マジックの見せ方が素っ気ないのと同じぐらい、その種明かしやパズルの解答も素っ気ない。石像当てとカードの的中はわかりにくいよ。(もちろんわかるけどさ。)

2002年11月9日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝
(2002年|1時間59分|日本)
ホームページ:http://www.trick-movie.com/

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主題歌:月光(鬼束ちひろ)
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