ブラッド・ワーク

2002/11/29 ワーナー試写室
イーストウッドの監督主演作だけに演出力は安定したものがある。
だが映画自体が小粒である感は否めない。by K. Hattori

 クリント・イーストウッドの監督主演最新作。日本では最近劇場面で冷遇されているイーストウッド作品だが、今回は丸の内ルーブルという大きなチェーンで全国公開されることになった。ただしこの映画が12月7日に公開された後、同じチェーンには21日から『ギャング・オブ・ニューヨーク』が入ることが決定済みなので、なんと2週間限定の公開だ。この映画が「12月公開」でありながら「お正月第1弾」ではない理由がこのあたりにある。ああ、やっぱりイーストウッドの映画って、こういう扱いなのかなぁ……。僕は今回の『ブラッド・ワーク』を特別すごい映画だとは思わないけれど、監督が入れ込みすぎて何だかよくわからなくなってしまった『ギャング・オブ〜』より、よほどガッチリと骨太にまとまったいい映画だと思うけどなぁ。

 犯行現場に謎めいた暗号を残して立ち去る連続殺人鬼“コード・キラー”の事件を捜査していたFBI捜査官テリー・マッケーレブは、容疑者追跡中に心臓発作を起こして倒れてしまう。それから2年。運良く移植心臓の提供者も現れ手術も成功したマッケーレブのもとに、グラシエラという女性がやってくる。コンビニで姉が強盗に射殺された事件の犯人を、彼に探してほしいというのだ。なんとマッケーレブの胸に移植された心臓こそ、殺されたグラシエラの姉の心臓なのだという。長らえた自分の命は、殺された別の人の命とつながっている。マッケーレブは心(心臓)の命じるまま、事件の捜査を始めるのだが……。

 最近のイーストウッド作品の中では、3年前の『トゥルー・クライム』や5年前の『目撃』に通じる作品。ただし今度の映画は、これら2作に比べてもずっと規模が小さい。『トゥルー・クライム』のジェームズ・ウッズや、『目撃』のジーン・ハックマン、エド・ハリス、スコット・グレン、ジュディ・デイビスといった豪華脇役陣に比べると、『ブラッド・ワーク』のジェフ・ダニエルズはあまりにも小粒。アンジェリカ・ヒューストンも顔を出しているが、物語に深くからむわけではなく、あくまでもゲスト出演のようなものだ。こうした役者の薄さが、そのままこの映画の軽さになっていると思う。

 イーストウッドの映画は脇役が誰であれ常に彼自身の個人プレイになるのだが、今回は脇役が主役の貫禄と釣り合いが取れず、映画としてはいささかバランスの悪いものになっている。いっそイーストウッドは脇に回って、主役は誰か別の俳優を立ててもよかったかもしれない。主人公が殺人事件の犠牲者から心臓移植を受けるという設定も、50代に見える俳優が演じるともう少し切実さが増したと思う。もっともイーストウッドは『パーフェクト・ワールド』で一度脇に回って失敗しているから、その苦い経験があるのかなぁ……。かといってこの程度の映画では、イーストウッドが監督に専念してどうこうというほどのものでもないしね。

(原題:BLOOD WORK)

2002年12月7日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2002年|1時間50分|アメリカ)
ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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DVD:ブラッドワーク
原作:わが心臓の痛み(マイクル・コナリー)
原作洋書:BLOOD WORK (Michael Connelly)
関連DVD:クリント・イーストウッド
関連DVD:ジェフ・ダニエルズ
関連DVD:ワンダ・デ・ジーザス
関連DVD:アンジェリカ・ヒューストン

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