ショウタイム

2002/09/10 パンテオン
ロバート・デ・ニーロとエディ・マーフィが初共演した刑事コメディ。
主演ふたりの芝居には余裕たっぷりだ。by K. Hattori

 刑事ドラマのスターに憧れる本物のパトロール警官トレイは、警察勤めのかたわら映画やテレビに出演することを夢見てオーディションを受け続ける毎日。だが回ってくる役はせいぜい通行人レベルのチョイ役だ。ある晩彼は銃を持った不審な男を見つけ、麻薬の取引現場に遭遇する。だがトレイが銃を突きつけた相手は、潜入捜査をしていた勤続28年のベテラン刑事ミッチだった。「本物の刑事は映画やドラマとは違う」が口癖のミッチは、刑事ドラマさながらの浮ついた態度を見せるトレイが気にくわない。ところがこのふたりが、テレビの実録番組用に即席コンビを組まされることになってしまう。警官としてはヘボなのに、テレビ写りはなかなか様になるトレイと、刑事としては一流なのに、無愛想でまったくテレビ向きではないミッチの凸凹コンビ誕生だ。

 主演はロバート・デ・ニーロとエディ・マーフィ。このふたりは何と初共演らしいのだが、張り合うことなく相互の持ち味をうまく引き出す演技を見せている。この映画に「大スター同士の強烈な個性のぶつかり合い」を期待した人は、なんだか肩すかしを食わされたような気がするに違いない。デ・ニーロもマーフィも、時に映画の流れをぶち壊しかねないようなエモーショナルな演技をすることでスターになったわけだが、この映画の中ではよい意味でも悪い意味でもプロの演技者に徹している。暴投のリスクを負って160キロのボールを投げることはせず、コントロールを生かして打たせて取るピッチングをしている。これはこれで当人たちの芸域の広さだし、うまさだと思うのだ。

 凸凹コンビが反目しながらも互いに相手を認め合い、やがて最高のコンビニなっていくという筋立てはありがちだが、そのありがちなお話に細々としたスパイスを利かせて楽しませる趣向だ。一番のスパイスは、映画やテレビに登場する「刑事らしさ」と、本物の刑事の行動の差異を誇張して見せてくれること。押収した麻薬をペロリとなめて「よし」とうなずくお馴染みのシーンも、デ・ニーロ扮するミッチに言わせれば「それが青酸カリならどうする? そんなもの現場じゃなめないよ」ということになる。なるほど、そりゃそうだ。

 主人公たちコンビを使って実録刑事ドキュメント「ショウタイム」を製作しているテレビ局のプロデューサー役に、『リーサル・ウェポン』シリーズのレネ・ルッソ。刑事番組のアドバイザーという役回りで、ウィリアム・シャトナーが本人役で出演しているのも面白い。主演ふたりが受け身の芝居に徹しているので、こうした脇役が少し羽目を外した芝居で遊ぶ余裕も生まれる。レネ・ルッソはなかなかチャーミング。シャトナーも笑わせてくれます。芝居にまだまだ余裕が感じられる主演コンビに、ハチャメチャな芝居をする脇役やゲストをからませるというコンセプトを徹底すれば、ここから新しい刑事シリーズが作れるような気がします。

(原題:SHOWTIME)

2002年秋公開予定 全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
(2002年|1時間35分|アメリカ)

ホームページ:http://www.warnerbros.co.jp/

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