アバウト・ア・ボーイ

2002/08/06 UIP試写室
ヒュー・グラントがお調子者の38歳シングル族を演じるコメディ。
男の本音を暴露する男性版ブリジット・ジョーンズ。by K. Hattori

 映画『ハイ・フィデリティ』の原作者でもあるニック・ホーンビィの同名小説を、『アメリカン・パイ』のポール&クリス・ウェイツ監督が映画化したラブコメディ。映画会社はこれを「『ブリジット・ジョーンズの日記』のフィルム・メイカーが贈る」としているが、中身は確かに似たテイスト。ただしこちらは男性版だ。『ブリジット〜』が30代独身女性の偽らざる本音を一人称で描いた映画だとすれば、この『アバウト・ア・ボーイ』は30代後半の独身男性の本音を一人称で描いた映画と言えるだろう。主人公ウィルを演じるのは、『ブリジット〜』にも出演していたヒュー・グラント。この映画はそこに12歳の少年マーカスをからめ、年齢も育ちも違うふたりの「男」の本音をそれぞれ一人称で語っていくという構成だ。

 タイトルの『アバウト・ア・ボーイ』とはマーカスのことであると同時に、いつまでも定職に就くことなく、結婚もせずに自由人として生活を謳歌しているウィルのことも指しているのだろう。「世の中なんてこんなものさ」と諦観していたふたりは、奇妙な偶然から接触を持ち、ともに「大人の男」へと成長していくことになる。マーカスを演じているのニコラス・ホルトという子役は、幼い頃からテレビや映画に出演しているというが、日本の映画ファンの前に登場するのはこの映画が初めてだと思う。役と同じ12歳らしいが、じつに達者な芝居を見せる。マーカスの母フィオナ役には『シックス・センス』のトニ・コレット。ウィルが惚れ込むシングルマザーのレイチェルに、最近は『ハムナプトラ』シリーズで一躍メジャーになったレイチェル・ワイズ。

 日本でも最近は「シングルライフ」が新しい生活スタイルとして市民権を得つつあるが、この映画に登場するウィルはまさに絵に描いたようなシングルライフの実践者。豊かな時代に人と物にあふれた都市で生活していれば、むしろ結婚などしないほうがよほど快適な生活を送れるのだ。他者との密接な関係性なしには一切の生活が成り立たない田舎暮らしと違い、都会ではお金さえ払えばありとあらゆるサービスを手に入れることができる。自分の部屋をお気に入りのインテリアで統一し、目の前には他人の都合に左右されない「自分だけの時間」が無限に広がっている。恋愛やセックスはこうした生活に不可欠な「いつでも取り外し可能なオプション品」と割り切ることだ。僕もお金はなくても似たようなシングル生活者なので、この映画で描かれたウィルの生活は十分にリアリティのある存在として感じられたし、心情も理解できるものだった。

 ただしこの映画はウィルというお調子者の男を通して、男性のシングル生活を無責任で甘えた態度として描いている。確かにこの映画に登場するシングル女性はみんな「母親」だったりするから、それに比べると男の単身者はお気楽でしょうね。それもわかってるんだけどさぁ……。

(原題:About a boy)

2002年9月中旬公開 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:UIP
(2002年|1時間42分|アメリカ)

ホームページ:http://www.uipjapan.com/aboutaboy/

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原作:アバウト・ア・ボーイ(ニック・ホーンビィ)
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