インソムニア

2002/07/18 日本ヘラルド映画試写室
アル・パチーノ扮する刑事が応援先のアラスカで窮地に追い込まれる。
『メメント』のクリストファー・ノーラン監督最新作。by K. Hattori

 『メメント』のクリストファー・ノーラン監督最新作。この監督は長編初監督作が自主映画『フォロウィング』で、2作目がガイ・ピアース主演の『メメント』だった。そこで大いに才能が注目されたにせよ、3作目にしてアル・パチーノやロビン・ウィリアムズが出演する大作映画の監督に抜擢されるとは大したものだ。日本でも最近はインディーズ映画からメジャーの大作映画の監督に抜擢される若手監督が少しずつ現れては来ているが(例えば『GO』の行定勲監督など)、アメリカの映画界はそのスケールが桁違いだ。

 ノーラン監督が過去に撮った『フォロウィング』や『メメント』は、映画の中で自由自在に時間が前後する凝った構成になっていた。だが今回の映画は、基本的に物語の進展が一方通行のわかりやすい構成。過去2作では脚本もノーラン監督自身が書いていたのだが、今回は同名ノルウェー映画のアメリカ版リメイクというベースがあり、脚本は新人のヒラリー・サイツが書いている。原作、脚本、監督を分けることで、監督の仕事を現場での演出に限定させようとするプロデューサーの判断だろうか。新人の大抜擢といっても、こういう点でアメリカの映画界はやはりしっかりしている。この抜け目なさにも感心する。

 氷河と森に囲まれたアラスカの小さな町に、ロス警察からふたりの刑事がやってくる。17歳の少女が全裸死体で発見された事件の捜査に協力するためだ。年配のウィルと相棒のハップは、ロスでも長年コンビを組んでいる殺人課の刑事で、この手の猟奇事件にも詳しい。発見された少女の遺留品を使って、警察は海辺の小屋に罠を張って犯人をおびき寄せようとする。だが濃霧の中で犯人を見失い、ウィルは相棒のハップを誤って射殺してしまう。ロスで始まっていた内務調査の関係で、この事故はウィルによる意図的な“相棒殺し”と解釈される可能性がある。彼はとっさに、ハップは逃げた犯人に殺されたのだと説明する。誰もその説明を疑うものはいなかったのだが……。

 タイトルの『インソムニア』とは不眠症のこと。白夜の気候と相棒殺しの自責の念、さらには自分が内務調査で告発されるのではないかというプレッシャーで、ウィルは一睡もできなくなってしまう。自分は本当に間違えてハップを殺したのか、それともハップだと知りつつ彼を撃ってしまったのか。犯人と被害者の女性の関係と、ウィルとアラスカ警察の若い警官エリーの関係の相似形。「あれは事故だった」と言う犯人の言葉は、はたして本当なのか。謎が新たな謎を呼ぶという連鎖型のミステリーではなく、考えれば考えるほど提示された謎が深まり、それによって今まで謎ではなかったはずのものまで曖昧さの中に溶け込んでいくというミステリーだ。

 ロビン・ウィリアムズの悪役は今回が初めてではないが、一見おどおどした男に見える顔の裏から凶悪さがチラリと見える終盤はすごい迫力だった。

(原題:Insomnia)

2002年9月公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:日本ヘラルド映画
(2002年|1時間59分|アメリカ)

ホームページ:http://www.insomnia-movie.jp/

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