王様の漢方

2002/07/03 メディアボックス試写室
中国の漢方医に心酔した社長がツアーを率いて中国旅行。
漢方のウンチクをダシにしたオバカ映画。by K. Hattori

 仕事で中国を訪れていた日本人社長の市川は、数十年悩まされ続けてきた持病の眼痛が、偶然出会った漢方の老医師リ・レン(李仁)の針であっという間に癒されたことに大感激。自分の借金返済と漢方の普及のため、日本からさまざまな心と体の悩みを抱える人を連れてきて、李先生に診てもらうという小規模なツアーを企画する。やってきたのは万里の長城のすぐ近くにあるリ先生の家。数千年の歴史を持つ漢方のパワーが、やがて日本人たちを癒していく。

 漢方医のリ・レン先生を演じるのは、ドラマ「大地の子」や映画『變臉/この櫂に手をそえて』『こころの湯』などの名優チュウ・シュイ(朱旭)。日本人社長の市川一雄を渡辺篤史が演じ、リ先生の押し掛け弟子ノーマンを『処刑人』『ブレイド2』のノーマン・リーダスが演じている。原作・脚本・監督・美術を担当したのは、これが監督デビュー作となるニュウ・ポ(牛波)。プロデュースと共同脚本は江戸木純、撮影は『冷静と情熱のあいだ』の津田豊滋、音楽はシー・チーヨウ(史志有)という日中合同のスタッフとキャストだ。

 宣伝用のポスターは万里の長城を使った格調高いもので、主演が名優のチュウ・シュイ、配給がアスミック・エース(+エデン)ということもあり、映画の内容も正統派のヒューマンコメディかと思っていたのだが、これが大間違い。中身はコテコテのオバカ映画でした。ストーリーもベタなら、芝居も演出もベタベタの紋切り型。僕はこの映画がオバカ映画だと最初は気づかず、気づいてからもずっと馴染めないまま、結局映画の最後まで行ってしまった。オバカならオバカでもいいんだけど、この映画はオバカ映画としての盛り上がりに欠けやしないだろうか。恐らくこの映画に必要な要素はあと3点。ベタなギャグ、ベタなロマンス、ベタなアクションです。

 例えばツアーに同行した中村は組の金を個人的に融通して市川に貸しており、それが組にばれてしまったという設定にする。金が回収できず、組にも追われるという立場に追い込まれた中村は、そのプレッシャーからインポになっているのだ。堅物のノーマンをモデルの和田がお色気で誘惑し、市川と秘書の小泉の間には恋が芽生えてほしい。オカマの菊地君と中村の間に恋が芽生えるという設定もアリだろう。映画後半では市川と中村を追って日本のやくざがやってくる。リ先生の薬種園は踏み荒らされ、孫娘のメイメイとオカマの菊地君が誘拐されて、リ先生の怒りが爆発。先生の太極拳に惚れ込んで弟子入りしていた中村と、以前から先生の弟子だったノーマンは、先生と共にやくざたちのもとに乗り込んで相手をコテンパンにやっつけてしまう。中村はやくざ廃業。市川の借金もチャラ。さらに市川は「漢方と太極拳」を次回の目玉企画としてツアー客を大勢中国に連れてくる。日中友好。めでたしめでたし……という展開はどんなもんでしょうか?

(原題:漢方道 GREAT WALL, GREAT MEDICINE)

2002年10月公開予定 シャンテシネ・他
配給:シネカノン
(2002年|1時間44分|日本、中国)

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