ドニー・ダーコ

2002/06/27 松竹試写室
高校生ドニー・ダーコが出会ったウサギの予言ははたして真実か?
あらゆる映画ジャンルを含んだ異色青春ドラマ。by K. Hattori

 ドニー・ダーコは少し変わった高校生だ。夢遊病癖があって夜ごとにベッドを抜け出し、朝になると山道で寝ているようなことがしばしばある。1988年10月2日。その日もドニーは彼に呼びかける声に導かれるようにして、家からフラフラと外に出ていった。その声の主は大きなウサギのぬいぐるみを着たフランクという男。彼は「今から28日と6時間42分12秒で世界は終る」とドニーに予言する。その直後、ダーコ家には大音響が轟き、家全体がぐらぐらと揺れる。上空を飛ぶ飛行機から脱落したエンジンが、遙か上空からドニーの寝室を直撃したのだ。ドニーは幻のウサギ男のおかげで九死に一生を得るが、この日から彼の周辺で奇妙なことが次々に起き始める。

 主演は『遠い空の向こうに』のジェイク・ギレンホール。流行のティーン・ホラーかと思いきや、これが何やら最初から最後まで様子が変なのだ。主人公のドニーはかつて放火事件を起こして逮捕されたことがあり、それ以来精神科に通ってカウンセリングや薬物療法を受けている。だがフランクの登場は彼の心の病が深刻化していることを意味し、それを精神科医も両親も、そしてドニー本人も十分に承知している。この映画は精神分裂病で徐々に現実感覚を見失っていく高校生と、彼の周囲にいる人間たちのドラマと言えるだろう。治癒困難な病気に蝕まれる主人公と家族の関係を見ていると、これがまるで昔ながらの「難病ドラマ」のようにも見えてくる。

 映画の中ではエピソードの区切りごとに「世界の終りまであと○○日」というテロップが挿入され、世界の終りとは何か、世界の終りの日にドニーの身に何が起きるのかという「謎」で観客を映画に引きつけ続ける。他にもドニーの部屋に墜落したエンジンの落とし主が、どういうわけか見つからないというミステリー。学校の体育教師が心酔する自己啓発セミナーの主催者、ジム・カニングハムのいかがわしさ。幻のウサギ男フランクの正体は誰か。死神オババことロバータ・スパロウとタイムトラベルの哲学の関係。そしてチャーミングな転校生グレッチェンとドニーの交際の行方。こうした数々の要素が映画の中にバラバラに投げ出されながら、映画の最後にあっと驚く方法でひとつにつながってい行く。SF、サイコサスペンス、青春ドラマ、犯罪映画、オカルト、ホラーなど、あらゆるジャンルを横断していくのがこの映画なのだ。

 物語の舞台がなぜ'88年でなければならないのか、正直言って僕にはまったくわからなかった。しかしドニー・ダーコの物語を10数年前に「終わってしまっている物語」として描くことで、世界が終るというフランクの予言が少なくとも現実の世界にとっては無効であったことを観客が知っている効果は大きい。世界の終りはやってこない。もしくはそれが、ドニー・ダーコ個人にだけ降りかかる形での「終り」になることが暗示されているのだ。

(原題:DONNIE DARKO)

2002年夏休公開 シネマスクエアとうきゅう
配給:アスミック・エース、ポニーキャニオン
(2001年|1時間53分|アメリカ)

ホームページ:http://www.asmik-ace.co.jp/

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