STICKMEN
スティックメン

2002/06/06 シネカノン試写室
賭けビリヤードの世界を描くニュージーランドのコメディ映画。
映像もスタイリッシュで全体にすごくカッコいい。by K. Hattori

 行きつけのプールバーで賭けビリヤードをして小銭を稼ぐ、ジャック、ウエイン、トーマスの3人組。彼らはある日店のマスターから、賭けビリヤードのトーナメントに出場してみないかと誘いを受ける。参加費500ドルはマスターが当面立替えてくれる上、優勝すれば莫大な賞金が手に入る(しかも税金がかからない!)というオイシイ話だ。強豪揃いの大会だが、3人は「あわよくば」という思いから大会への出場を決意。チーム名は「スティックメン」だ。ところがこの試合の裏には、3人の知らないところでさまざまな思惑が渦巻いていた。借金で首が回らなくなっているマスターは、3人の優勝に大金をかけることで起死回生のチャンスを狙う。大会を主宰するギャング側は、初出場のダークホースが勝ち上がっていくことを望まず、あの手この手で3人の行く手の邪魔をする。さらにジャックとトーマスがつきあい始めた女の子たちが、裏でコソコソと内緒話。「負けてもともと」と軽い気持ちで試合出場を決めた3人は、四方八方から強い逆風が吹く中で、何が何でも負けられない状況に追い込まれてしまう。

 この手の映画の場合、まず主人公たちの絶体絶命の状態を設定し、「人生の逆転のためには大会で優勝だ!」と意気込むのが常。ところがこの映画はそこを少しずらして、まずは簡単に主人公たちの試合出場を決めさせ、その後ににっちもさっちも行かない袋小路の中に追い込んでいく。少しずつ見えてくる、周囲の人々の思惑。3人の前に次々現れる個性的な強敵たち。こうして矢継ぎ早にネタを繰り出して、上映時間1時間35分をたっぷりと楽しませてくれるという趣向だ。

 監督のハーミッシュ・ロスウェルはCM出身だそうで、映画の中ではあちこちに凝りまくった映像処理を見せてくれる。ビリヤードのルールなんてわからなくても大丈夫。ここ一番の勝負所ではがぜんドラマが盛り上がってくるので、観ていて自然に「これは大変な場面だぞ!」とわかる仕組みになっている。本当はどんなスポーツでも試合の組み立てに競技者の個性が出るのだろうが、この映画はそうした細部より、出場者のルックスというわかりやすい部分で個性を演出している。いかにもそれ系のゲイ・チームは雰囲気だけで3人の気分を萎えさせ、あっと驚く「メン・イン・ブラック」には観客も大笑いし、全身タトゥーとピアスで凶暴さを演出する連中まで現れる。そして映画の終盤には、さらに観客をあっと驚かせる強敵まで現れて……。とにかく楽しいのだ。

 プールバーに出入りするマフィアの用心棒が、映画の要所要所に現れて警句めいた言葉を語るという演出も面白い。これが物語にアクセントを加えて、全体をひとつの引き締まったドラマにしている。手に汗握る試合展開の面白さに加え、青春ドラマや恋愛映画の要素もあり、しかも全体としてコメディ映画。頭からシッポの先までぎっしりアンコの詰まったタイヤキのように、最初から最後までハラハラ、ドキドキ、ニヤニヤできる映画です。

(原題:Stickmen)

2002年7月下旬公開予定 シネ・アミューズ(レイト)
配給:
M3エンタテインメント 宣伝:スローラーナー
(2000年|1時間35分|ニュージーランド)

ホームページ:http://www.stickmen.co.nz/

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