キル・ミー・レイター

2002/04/05 メディアボックス試写室
間抜けな銀行強盗と彼の人質になった女性銀行員が恋に落ちる。
登場人物たちのキャラクター描写がなかなか秀逸。by K. Hattori

 銀行の融資担当窓口で働いているショーンは、上司との不毛な不倫関係に終止符を打とうと決意する。彼女にとっては辛い決断だったが、相手はまるで平気の平左。相手に何を望んでいたわけでもないし、最初から不実な男とわかってはいたけれど、コケにされればやはり傷つく女心。愛妻の手を握ってニッコリ微笑む上司の顔を見て絶望的な気分になったショーンは、強い酒をあおりながら銀行の屋上から飛び降り自殺でもしてやろうと考える。ところが屋上のヘリでふらついているショーンを見つけ、警察に通報した人がいた。サイレンを鳴らしながら飛んでくるパトカー。ちょうどその時、銀行の裏口で現金輸送車を襲撃していた強盗たちは、サイレンの音を聞いて大慌てで逃げ出した。なんとう間の悪さ。強盗のひとりチャーリーは、警官に追われるまま屋上へと追い込まれていく。彼は自殺寸前のショーンを人質にするが、彼女は自殺志願者だから死ぬことが恐くない。人質に死なれては困るチャーリーは、何とか彼女の自殺を押しとどめ、「無事に逃げられたら殺してやる」と約束して、その場から手に手を取って逃走を始める。

 厄介な人質ショーンを演じるのは、『クルーエル・インテンションズ』のセルマ・ブレア。間抜けな強盗チャーリーを演じているのは、『グリッター/きらめきの向こうに』でマライア・キャリーの恋人役を演じたマックス・ビーズリー。監督はこれが2本目の監督作となる女性監督ダナ・ラスティグだ。脚本は監督の前作『ワンナイト・ウェディング』でもコンビを組んでいるアネット・ゴリーティ・グティエレズが担当している。女性監督・女性脚本家で、主人公は女性。銀行強盗と人質女性が恋に落ちる話は、最近の映画『バンディッツ』なども含めて数多くあるだろう。でもこの映画はありがちな「強盗と人質のラブストーリー」を、人質になった女性の側から描いている点がユニーク。ヒロインのショーンは、強盗のチャーリーにとって決して御しやすい人質ではないし、都合のいい女の子でもない。そもそもこのふたりの関係は、自殺願望の人質と、人質に死なれては困る強盗という意味で最初から逆転しており、心理的にはショーンの方が優位に立っているのだろう。

 ヒロインのショーンを含めて、登場人物たち全員のキャラクターがじつに魅力的に描けている。ショーンが抱えている悩みや葛藤。チャーリーが抱えている心の傷。こうした主人公たちの心理を丁寧に描くのは当然だが、この映画は主人公たちの周辺に出没する人物たちまできわめて丁寧に人物像が作り込まれているのだ。銀行前で現行犯逮捕されてしまった老強盗。不実な女に入れ上げている間抜けな相棒。ショーンの父やチャーリーの元妻といった人物が、人間的な弱さを持つ普通の人々として描かれているのも好ましい。主人公たちを追う刑事コンビも、ちょっと素敵ないい男たちなのだ。出演者がマイナーなので、公開規模が小さくなっているのだろうが、観れば誰しもそれなりに楽しめる映画だと思う。

(原題:KILL ME LATER)

2002年6月中旬公開予定 銀座シネパトス
配給:メディア・スーツ 宣伝・配給協力:シネマ・パリジャン

(上映時間:1時間29分)

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