ドラえもん
のび太とロボット王国〈キングダム〉

2002/03/12 日劇2
ロボットを奴隷化する世界を救うため、のび太たちが冒険の旅に出る。
作り手のSFマインドの欠如が少し気になるなぁ。by K. Hattori

 映画版『ドラえもん』のオリジナル長編最新作。同時上映は藤子・F・不二雄の原作をほぼそのまま映画化した短編『ぼくの生まれた日』と、ドラえもんのキャラクターを借りた『ザ・ドラえもんズ/ゴール!ゴール!ゴール!!』の2本。以下、上映順に内容と感想。

 『ぼくの生まれた日』は僕も原作を読んだ記憶があるけれど、物語の後半にある病院の木のエピソードは映画のオリジナルだと思う。しかしこの脚色によって、のび太の両親が生まれたばかりの我が子にかける期待や愛情という本来のテーマが、少しばかり脇道にそれてしまったような気がする。のび太は10歳ぐらいのはずだけれど、土手の土に挿し木した枝が、わずか10年であんな大木に育つものなんだろうか。もしこのエピソードを入れるなら、土手の木はまだ小振りなものにして、これからのび太と一緒にぐんぐん大きく成長していくのだという含みを持たせてほしい。昭和を感じさせる風俗描写など、併映短編ではお馴染みになった細部までよく気配りが行き届いているだけに、欠点が気になってしまう。

 もう1本の短編『ザ・ドラえもんズ』は、今年盛り上がるであろうサッカーをモチーフにしたネタ。『ワンピース』の併映短編も、今年はサッカーだったことを思い出す。今年は何をさておいてもサッカー。企画としては安直か。しかし今回の『ザ・ドラえもんズ』は、いつものキャラクターを登場させても台詞なし。音楽とアクションだけでギャグを次々に作り出していくという、ちょっと意欲的な内容。まぁやってくることは古いんだけど、今となってはこういうのがかえって新鮮かも。

 長編『のび太とロボット王国〈キングダム〉』は、ロボットから感情を抜き取って奴隷化しようとする星から逃げてきた少年ロボットを助けるため、ドラえもんやのび太たちいつものメンバーが大活躍するお話。スネ夫が買ってもらった犬型のペットロボット「アソボ」というのが出てくるのだが、その時誰も「ドラえもんが猫型ロボットである」という話をしない不自然さ。ロボットにはそもそも感情などないのだから(アソボにだって感情はない)、ロボットから感情を取り去って奴隷化するという話に「ひどい」と言うのもちょっと変な話。SFの素地が備わっていた原作者が今も生きていれば、このあたりに短くて的確な解説の言葉を補って、ロボットの発達史について大きな広がりのある世界を見せてくれただろうに。この映画は、そのあたりがだいぶいい加減。

 しかし結局これは、物語の作り手が「鉄腕アトム」の世代なのか、それとも「ドラえもん」の世代なのかという違いかもしれない。「鉄腕アトム」の世界では、ロボットと人間が対立するなんて当然の話だもんね。でも「ドラえもん」では最初から、ロボットが人間のお友達であることを前提としている。『A.I.』のスピルバーグもキューブリックも「鉄腕アトム」の世代だから、彼らがロボット映画を作れば当然ああしたものになる。なんだか世代の隔たりを感じてしまいました。

2002年3月9日公開 日劇2他・全国東宝系
配給:東宝

(上映時間:1時間21分+短編2本)

ホームページ:http://www.dora-movie.com/

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主題歌CD:いっしょに歩こう(KONISHIKI)
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