《ドロップ・シネマ・パーティー》

2002/01/21 シネカノン試写室
映画学校の生徒が作った短篇映画集。どれも内容はイマイチ。
もうちょっとなんとかならないのかねぇ……。by K. Hattori

 映像・演劇などの最前線で活躍する旬のクリエイターを講師に迎え、新しい表現者の育成を目指して'98年に設立した演劇ぶっく社のアートスクール「ENBU[演劇&映像]ゼミナール(略称:えんぶぜみ)」というものがある。その学生が作った短篇映画を、一般の映画館で発表するというので試写を観ることにした。今回試写で上映されたのは、篠崎誠クラスの『命の響き』、中島哲也クラスの『LUCKEY STRIKE』、古厩智之クラスの『補欠の放課後』、村本天志クラスの『青の写真』の4本。以下各作品の内容と簡単な感想。

 村越繁監督・脚本の『命の響き』は、ピストル強奪犯を追う刑事の追跡劇と、偶然その場に居合わせた同僚の刑事や通行人などの様子を描くアクション・コメディ。ただし笑えない。配役はかなり豪華で、顔ぶれだけ見ているとまるでプロが撮った映画みたい。でも笑えない。たぶん脚本を書いた段階では「これは面白い」と思ったんでしょうけど、残念ながらクスッとも笑えない。なぜこんなにつまらないのでしょうか。ところが恐ろしいことに、今回上映された4本の短篇映画の中では、この作品が一番マシだったりする。話もわかりやすいし、展開もよく考えられているし、オチもある。でも笑えない。

 山下よしこ監督の『LUCKEY STRIKE』は、4本の中でもっともつまらない作品。映像やシチュエーションはいろいろと工夫している気配が見えるが、気配は見えてもそれが実体として現れない。とにかくこの作品については、話がまったくわからないのが致命的。話がわからなくても突出した映像技術やセンスがあれば「映画」は成立するけど、この映画にはそうした映像の突出など皆無。まずは物語をきちんと「語る」ことをベースに、その上で物語の解体を目指す方がいいと思うけど……。

 駒井亮平監督の『補欠の放課後』は、長い映画の1シークエンスを観るような雰囲気のある作品。部活にも身が入らず、友達と遊んでいても白けてしまう主人公の姿が、身体的なリアリティを持って表現されている。習作としてはまずまず。ただしこれ、独立した作品としてはあまりにも中途半端だろうと思う。少し残念。

 松田龍樹監督・脚本の『青の写真』は、大学の写真部を舞台にした青春映画。進路に迷い、恋愛にも中途半端な態度しかとれない主人公の姿が、なんともじれったくてもどかしい。まぁ青春期というのは、こういうじれったさやもどかしさが必ず付いて回るのだろうけれど、その「じれったい時間」「もどかしい時間」をスッパリと省略するとか、他の表現に置き換えていくのが映画や演劇という「劇的空間」における表現術なのではなかろうか。この映画にはそうした工夫がない。これは画面が暗いとかアフレコが合っていないという以前にある、脚本上の問題。もっと脚本を練れば、もっとよくなるのに。

 学生映画を上映する試みとしては、映画美学校の例もある。こうした学生たちの中から、ひょっとしたら将来、有望な映画作家が生まれてくるのかもしれないけどね。

2002年3月上旬公開予定 テアトル新宿(レイト)
問い合せ:ENBUゼミナール

(上映時間:計1時間45分)

ホームページ:http://www.enbu.co.jp/zemi/

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