グラスハウス

2002/01/09 SPE試写室
リリー・ソビエスキー主演のミステリー・サスペンス映画。
彼女の水着姿はファンなら必見だけど……。by K. Hattori

 交通事故で両親を失った16歳のルビーは、11歳の弟と共にかつて隣人として親しくしていたグラス夫妻に引き取られることになる。姉弟には両親が残された莫大な遺産があるが、姉弟が成人するまではグラス夫妻がふたりの後見人となる取り決めだ。だが夫妻の家に到着した直後から、ルビーは夫妻の言動に違和感を持ち始める。それは両親の死で神経が高ぶった少女の妄想に過ぎないのか。ルビーは夫妻の激しい口論の現場を見てしまう。どうやらグラス氏は事業で資金難に苦しんでいるらしい。グラス夫人は薬物中毒のようにも見える。グラス氏はそれを「商売ではよくあること」「妻は糖尿病で注射していたのはインシュリンだ」と言うのだが、ルビーの疑惑はどうしても晴れない。やがてルビーは両親の死にもグラス氏が関わっていたのではないかと考えはじめる。

 リリー・ソビエスキー主演のミステリー・サスペンス。グラス夫妻を演じているのは、ダイアン・レインとステラン・スカルスゲールド。金に困った夫婦が資産家の夫婦を殺し、その子供を引き取ることで自分たちに金が入るように仕向けるという筋立てを、子供の視点から描いている。映画の中ではシェイクスピアの「ハムレット」が盛んに引用されているが、子供が自分の親の死に疑惑を抱き、今は自分の保護者となっている者に復讐するという話の構成は「ハムレット」と同じだ。ただし翻案というわけではない。これは財産目当ての殺人事件という古くさい物語にシェイクスピア劇というさらに古典的な衣装をまとわせることで、映画全体としてはモダンなものに仕立てようという工夫だろう。「ハムレット」の引用は、この映画がシェイクスピア劇と同じ構成であることを観客に悟らせる仕掛けに過ぎない。

 ソビエスキーは『愛ここにありて』以降、ウドの大木のようにすくすく成長して少女らしい初々しさをなくしてしまったように思うのだが、この映画では多少なりとも少女のあどけなさが残っている。一応2001年製作の映画になっているけれど、撮影したのはもっと前なのかもしれない。この映画には着替えのシーンや水着のシーンがあって、僕のようなソビエスキーのファンには嬉しい内容だろう。監督は「X-ファイル」シリーズで演出を担当していたダニエル・サックハイムで、本作が長編劇場映画デビュー作。演出ぶりは平凡で、スリラー演出にも冴えたところがない。

 映画冒頭にあるホラー映画のパートを見ただけで、この監督の凡庸さがわかる。とにかくまったく恐くないのだ。主人公のルビーはこのシーンでつまらなそうな顔をしていたから、ひょっとしたらもともと「そう面白くもないホラー映画」というつもりで作った場面なのかもしれないけれど、だったら本編ではヒロインが映画を越える恐怖を味わってくれないとなぁ……。映画の終盤の詰めも、僕は釈然としない。最後に都合よく別の悪党が出てきて、善意の人が殺されてしまう理由がどこにあったんだろう。楽しい映画だけど、スッキリしないのだ。

(原題:THE GLASS HOUSE)

2002年3月16日公開予定 シネマ・メディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給協力・宣伝:メディアボックス

(上映時間:1時間46分)

ホームページ:http://www.spe.co.jp/movie/smp/

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