クールボーダー

2001/12/21 東宝東和試写室
スノーボードをモチーフにしたコメディタッチの青春映画。
いい加減な物語も含めて十分に楽しめる。by K. Hattori

 今やウィンタースポーツの主役となったスノーボードがモチーフの青春映画。物語の舞台はアラスカにある小さなスキーリゾート地。そこは希代の名物オーナーが一代で築き上げた小さな村だったが、オーナーの死去により、2代目オーナーはリゾート経営を他者に売却しようと考える。乗り込んできたのは世界中のリゾート開発で合湾を振るうメジャース氏。彼はこの小さな村に莫大な資本を投下し、近代的なリゾート地に変貌させようと画策する。だがそれは昔からこの地を愛してきた若者たちを排斥し、地元民から山を取り上げることでもあった。主人公リックと仲間たちは始めのうちこそメジャースに協力的だったが、村が自分たちの見知らぬものへと大きく姿を変えていく様子を目の当たりにして、ついに自分たちの手に村を取り戻そうと決意する。

 物語は単純すぎるほど簡単で、しかも古めかしい。昔ながらのスキーリゾート地を、昔ながらの素朴な姿に留めておくことが「善」で、外部資本を入れて近代的な姿に生まれ変わらせることは「悪」であるという二分法。そこでは貧しい若者たちの共同体はただ貧しいという理由だけで「善」とみなされ、大富豪の資本家はただ金を持っているというだけの理由で「悪」とみなされる。そもそもスキー場を売り飛ばそうとした2代目の無責任さが問題だと思うけれど、それは「地元民」のよしみで不問とされてしまう大甘ぶり。しかしこうした世界観は、物語を成り立たせるため便宜的に持ち込まれた設定に過ぎない。この映画には、そもそもろくな話などないのだ。主人公の恋愛話は丸ごと『カサブランカ』からの引用になっているし、そもそも主人公の名前“リック”からして『カサブランカ』の主人公と同じ名前じゃないか。劇中には『カサブランカ』の名場面をパロディにしたシーンが多数あり、思わずニヤニヤ笑ってしまう。

 しかしこの映画、別に『カサブランカ』のパロディ映画ではないのだ。誰もが知っている有名な映画を、一種のサービスとして引用して見せただけなのではないだろうか。映画には「600万ドルの男」のリー・メジャースが役名もメジャースのままで出演したり、'97年のプレイメイト・オブ・ザ・イヤーであるビクトリア・シルブステッドが出演したりしているが、おそらく『カサブランカ』の引用もこうしたゲスト出演者と同じ次元での発想なんだと思う。引用自体にはあまり意味がない。

 映画の売りは迫力のあるスノボの登場シーンであって、それは物語云々とはまったく別の次元で面白く仕上がっている。序盤に出てくる「キング・オブ・マウンテン」という競技も面白い。参加者がそれぞれ手にジョッキ1杯のビールを持って山頂からふもとまで滑り降り、最後によりたくさんのビールが残っていた方が勝ち。勝者はその後1年間、「キング・オブ・マウンテン」と呼ばれる栄誉が授けられるだけ。こういうの、僕は好きです。エンディングにはNG集があるが、これを見ると映画の撮影は結構命がけだったことがわかる。

(原題:OUT COLD)

2002年2月16日公開予定 全国ワーナー・マイカル・シネマズ
配給:東宝東和 宣伝:メディアボックス

(上映時間:1時間30分)

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