Dr.Tと女たち

2001/12/05 東宝第1試写室
リチャード・ギアが女にモテモテの産婦人科医を演じるコメディ。
監督はロバート・アルトマン。豪華キャストも見もの。by K. Hattori

 ロバート・アルトマンの最新作。主人公はリチャード・ギア演じる産婦人科医のサリヴァン・トラヴィス。患者たちからは「ドクターT」と呼ばれ、家族や友人たちからは「サリー」と呼ばれる男。テキサス州ダラスで個人営業の診療所を開業しているのだが、先生の甘いマスクに惹かれてか、診療室も待合室も連日すし詰めの大盛況。そんなDr.Tの周辺には、どういうわけか女たちの姿が目立つ。家の中には愛する妻とふたりの娘。義理の妹も娘3人を連れて居候中だ。家の中でも仕事場でも女たちに囲まれて、Dr.Tがほっと息をつけるのは週末に仲間たちと行くゴルフやハンティングぐらいだ。

 仕事が順調で経済的にも恵まれ、家庭は円満で、家庭外の恋愛にも旺盛に食指を延ばすDr.Tの暮らしぶりは、そのどれにも恵まれない世間一般の男どもから見れば天国のような暮らしぶりに見える。しかしDr.Tには彼なりの悩みがあり、いくら世間一般がうらやむような暮らしであろうと「もうウンザリ!」とすべてを投げ出したくなることもある。なんて嫌味なんでしょ! しかしそれをリチャード・ギアが演じると、あまり嫌味がないのは不思議だ。考えてみればギアという俳優はあの『プリティ・ウーマン』を例に出すまでもなく、「僕ってエリートでお金持ちだけど、心はくたくたに疲れてるのさ。あ〜、誰かに癒されたい!」という男を何度も繰り返して演じている。だから今回の役も、リチャード・ギアが日頃から得意としている役のひとつなのだ。

 出演している女優陣が超豪華。『ハート・オブ・ウーマン』『ペイ・フォワード/可能の王国』『キャスト・アウェイ』のヘレン・ハント。オリジナル版『チャーリーズ・エンジェル』のファラ・フォーセット。『ジュラシック・パーク』『遠い空の向こうに』のローラ・ダーン。『ビッグ・リボウスキ』『アメリカン・パイ』のタラ・リード。『あの頃ペニー・レインと』のケイト・ハドソン。『クッキー・フォーチュン』に引き続きアルトマン作品出演となったリヴ・タイラー。そしえて芸達者なベテラン女優シェリー・ロングが、Dr.Tの右腕となる看護婦を演じている。

 Dr.Tの診療所を中心に、いくつかの中心となるセットを俳優たちが入れ替わり立ち替わり出入りして、ユーモアタップリの小さな芝居を演じていくという、まるでアメリカのテレビドラマ(シットコム)みたいな作りの映画。Dr.Tのもとを訪れる患者は老いも若きも美人揃いで、舞台設定全体が何となく“上げ底”になっている感じも漂う。こうした雰囲気もシットコム調。アルトマンの映画はいつもオールスターキャストだが、それにしてもここまで作り物めいた雰囲気を前面に押し出すのは珍しい。これはアルトマンが意図的に狙った演出だろう。もっともアルトマンの出世作『M★A★S★H』も、戦場を舞台にしたシットコムみたいなものだったけれど……。脚本は『クッキー・フォーチュン』に引き続きアン・ラップが担当している。

(原題:Dr.T & the Women)

2001年12月29日公開予定 日比谷スカラ座2
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:ビッグショット

(上映時間:2時間2分)

ホームページ:http://www.dr-t.com/

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