《上海アニメーションの奇跡》
Aプログラム

2001/11/29 徳間ホール
上海の国立アニメスタジオから生まれた短篇映画5本。
水墨画アニメはすごい技術だと思う。by K. Hattori

 中国のアニメスタジオ「上海美術電影製片厰(上海美術映画製作所)」の製作映画から、代表作7本を集めた特集上映。そのうちAプログラムは「胡蝶の泉」「牧笛(ぼくてき)」「猿と満月」「琴と少年」「鹿鈴(ろくれい)」の5本が上映された。どれも10分か20分程度の短編映画で、台詞もなく、動きと音楽だけで物語を綴っていく。以下、各作品の簡単な内容と感想。

 「胡蝶の泉」は24分のセルアニメ。雲南省の少数民族ペー族に伝わる伝説の映画化だそうだ。映画の冒頭と最後は実写撮影で、今に残る「胡蝶の泉」の姿を観客に提示する。おそらくこの映画は、この泉にまつわる伝説なのだろう。木こりの娘と猟師の青年が出会い、愛し合うようになるが、美しい娘を我がものにしようとする領主は強引に娘を誘拐。青年は娘を助け出すが、領主の軍勢に断崖へと追いつめられる……。かなり線の省略された絵だが、撮影時に影を作っているらしく、かなり微妙な陰影のある絵になっている。

 2本目は水墨画アニメの「牧笛」。水牛と散歩に出た少年が、木の上でうとうとと居眠りを始めて夢を見る。それは少年がいつも持ち歩く笛についての夢だった。濃淡のある墨絵のタッチはセルアニメでは作るのが難しいと思うが、このアニメはいったいどうやって作ったのか。いずれにせよ、恐ろしく手間のかかりそうな絵。高畑勲の『ホーホケキョ となりの山田くん』のルーツは、案外このあたりにあるのではないだろうか。『山田くん』はデジタルペイントであの濃淡タッチを製作していたが、「牧笛」はすべて手作業だと思われる。すごい。ちなみに風景や水牛の姿は水墨画風だが、少年の姿はセルアニメになっているようだ。詩情あふれる作品。20分。

 続く「猿と満月」は切り絵を使った10分間のアニメだが、不覚にも眠ってしまったので感想は略す。4本目は水墨画アニメの「琴と少年」。19分。行き倒れになった老人を助けた少年が、そのお礼に老人から琴の手ほどきを受ける。これは人物も水墨画風の絵になっている分、「牧笛」よりも手間のかかる作品になっているはず。風景はとことん省略されて、色や動きもぎりぎりまで抑制されている。僕は話があまり面白くないような気がするんだけど、これは好みの問題だろう。

 最後の「鹿鈴」は、大鷹に襲われて親にはぐれた子鹿と、祖父とふたりで暮らす少女の交流を描いた19分の水墨画アニメ。今回の上映作品の中では、これが一番面白かった。はじめは少女におびえた表情を見せていた子鹿が、少しずつ少女の友だちになっていく様子。1年たつと子鹿も身体が二回りほど大きくなり、頭には小さな角も生えてくる。だがやがて、少女と子鹿は離ればなれにならなければならない運命なのだ。少女が子鹿に向かって振る小さな鈴の音色。少女が子鹿の首に鈴をかけてやるシーンは感動的。ちょっとジーンと来ます。

 特集上映はあと2本。24分の人形アニメ「不射之射」と、59分のセルアニメ「ナーザの大暴れ」がある。

2002年3月公開予定 ユーロスペース
配給:東光徳間

(上映時間:1時間32分)

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