ラットレース

2001/11/20 松竹試写室
平成版……じゃなくて21世紀版の『キャノンボール』。
配役は小粒だなかなか楽しめる作品。by K. Hattori

 ラスベガスのカジノ王が企画した、ルール無用の賞金レース。ラスベガスのホテルからニューメキシコのシルバーシティまで、いかなる手段や方法を使っても、他人を出し抜いていの一番にゴールに駆け込んだチームが賞金200万ドルを獲得できるという大勝負だ。破格の賞金に色めき立ったのは、一癖も二癖もある連中ばかりだった。20数年ぶりに再会した黒人母娘、試合中に大ポカをやらかしたNFLの審判、たまたま家族旅行でベガスに来ていた一家、真面目な弁護士とプッツン女性パイロット、ケチな詐欺師兄弟、怪しげなイタリア人……。

 昔懐かしい『キャノンボール』型の公道レース映画。この手の映画は「オールスターキャスト」が前提になるのだが、この映画では出演がウーピー・ゴールドバーグ、キューバ・グッディングJr.、ローワン・アトキンソン、ジョン・ロヴィッツ、ジョン・クリースなどだから、顔ぶれとしてはだいぶ小粒。そもそも最近はこうした映画に似合う、見るからに「映画スター!」と言えるような人気役者がいなくなってしまった。例えば本家『キャノンボール』には、バート・レイノルズ、ファラ・フォーセット、サミー・デイビスJr.、フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、テリー・サバラス、ロジャー・ムーア、リカルド・モンタルバンなどが出演していた。これだけでゲップが出そうだけど、こうした顔ぶれが満腹感を生み出していたのだ。しかし現代は「映画スター!」ではなく「俳優」の時代。どうしたって映画は小作りになる。ただし芝居はさすがにテンポも切れ味もいい。個々のエピソードやギャグはどれも秀逸で、最初から最後までクスクスゲラゲラ、笑いが絶えない作品になっている。中でも痛快なのは、何でもかんでも賭けの対象にするホテル王のジョン・クリース。

 細かなギャグの連鎖で最初から最後まで見せていく映画なので、キャラクターごとのエピソードに出来不出来のばらつきが目立つと、そこで映画全体のテンションが下がってしまう。この映画はそのあたりをうまくクリアしている。脚本を書いたのは「サタデー・ナイト・ライブ」出身のアンディ・ブレックマン。監督はこれが『殺したい女』以来のコメディ作品になるジェリー・ザッカー。なんと15年ぶりのコメディだ。

 現実問題としてある場所から大勢が一斉にヨーイドンでスタートすれば、1000キロ先のゴール時点でかなりの差が付いてしまうはず。それを最後までもつれた接戦として見せるのは、“そういう映画だから”と思いつつもちょっと苦しい。脱落者や落伍者が途中で何組か出て、その上で一発逆転の大勝負になって最後は接戦になるとか、あとひと工夫欲しかったような気もする。手に入れた高額賞金の使い道も、落としどころとしてはこの映画のようなところに落ち着くのだろう。しかしこのオチはちょっとパンチ不足。ジョン・クリースの困った顔で、観客がニコリとでも笑えるとは思えない。もう少し意地悪なオチにしてくれてもよかったと思う。

(原題:RAT RACE)

2002年新春第2弾公開予定 丸の内プラゼール他・全国松竹東急系
配給:松竹 配給協力:アルゼ

(上映時間:1時間52分)

ホームページ:http://www.ratrace.jp/

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