血を吸う宇宙

2001/11/16 映画美学校第2試写室
問題作『発狂する唇』のスタッフ&キャストが再結集したパート2。
主演は中村愛美。阿部寛演ずるFBI捜査官が再登場。by K. Hattori

 確信犯的な和製オバカ映画として賛否両論分かれた『発狂する唇』のパート2。資料には『「発狂」シリーズ第2弾』と書かれているけど、『血を吸う宇宙』というタイトルのどこに「発狂」があるんだよ〜。この位置づけ自体が既に発狂寸前。脚本の高橋洋、監督の佐々木浩久は前作と同じ。それどころかキャストも半分ぐらいは重なり合っている。前作と同じ役で登場する者もあれば、前作とは縁もゆかりもない役柄で登場する者もいる。前作で死んだ者が甦り、前作で消えた者が別の役で再登場。もちろん新しいキャストもいるけどさ……。

 死刑執行直前の女・倉橋里美(『発狂する唇』のヒロインと同じ名前だが別の人物)が、処刑直前に突然正気を取り戻し、懺悔を聞きに来た尼僧に対してこれまでのいきさつを告白する。(尼僧が懺悔を聞くという設定自体が既に狂っている。)そもそものきっかけは、里美の娘ミサトが何者かに誘拐されたことだった。駆けつけた刑事たちに、会社から戻った夫はうんざりした顔で告げる。「うちに娘なんていません。妻の妄想なんです」。だが帰りかけた刑事たちの目の前で、誘拐犯からの脅迫電話がかかってくる。電話を通して聞こえてくる、怯えきった少女の声。やはり誘拐事件はあったのか? 逆探知の結果、脅迫電話は里美の実家からだったが……。

 こうやってストーリーを整理してしまうと、この映画の面白さはちっとも伝わらない。この映画のすごさは、ストーリーの意図的な破綻にある。ヒロインの倉橋里美は今回の映画で初めて登場したキャラクターだが、それをまったく無視して突然現れる『発狂する唇』のメンバーたち。突然現れる女霊媒師。首のない女子高生。FBIの成本とルーシー。前作からそのままの設定で登場しているこれらメンバーに加え、役柄を変えて登場している諏訪太朗、下元史朗、三輪ひとみ、吉行由美といった顔ぶれ。前作と本作とで共通する「倉橋里美」や「清彦」といった固有名詞。こうした仕掛けによって、ふたつの映画は単純な正続編という位置づけを超えて、パラレルワールドのような世界観を作り上げている。

 前作は出会い頭の一撃だった。今回は観る側があらかじめ身構えているから、前作と初めて観た時のような衝撃を味わうのは無理がある。テイストは同じだが、しょせんは二番煎じという印象はぬぐえない。登場するキャラクターの行動も、前作は桁外れのぶっこわれぶりだと思ったが、それは僕の錯覚だろうか。今回は何よりもエロが足りない。前作で三輪ひとみがレイプされた時のような、ドキドキする場面がない。選挙カーの中で中村愛美が候補者のオヤジに犯されても、肝心の所はすっかりカット。これはもっと露骨に悪趣味ぶりを発揮してほしかった。逆に悪趣味ぶりが最高に冴えていたのは、阿部寛演じる成本の過去が語られるエピソードだろう。これには参った。諏訪太朗がうますぎる。こりゃ確かに悪夢だ。ゲスト出演の黒沢清と中田秀夫もいい感じ。意味不明の刑務所カンフーも面白かったけどね。

2001年12月22日公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:オメガ・ピクチャーズ 宣伝・問い合せ:オムロ

(上映時間:1時間25分)

ホームページ:http://omega.co.jp/~chiwosu/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ