少女たちの遺言

2001/10/16 TCC試写室
女子高生の交換日記と自殺からはじまる物語。
個々の描写はともかく、話がわかりにくい。by K. Hattori

 女子校に通うミナが、偶然学校で拾った1冊のノート。それは同じクラスの生徒シウンと、隣のクラスの生徒ヒョシンの交換日記だった。何かと噂の絶えないこのふたり。ミナは彼女たちの秘密を盗み見る誘惑に耐えられず、この交換日記をこっそり読み始める。だがその直後、ヒョシンは校舎の屋上から飛び降り自殺する。ミナはこの事件をきっかけに、ますます交換日記の世界にのめり込んでいく。ヒョシンの死にまとわりつくシウンの影。いったいふたりの間に何があったのか? なぜヒョシンは死ななければならなかったのか? その秘密は日記帳の中に隠されているのか? やがてミナの周囲で、奇妙な現象が起こり始める。これはヒョシンの幽霊の仕業?

 韓国でヒットした学園ホラー映画『囁く廊下/女校怪談』の第2弾として企画された作品だが、内容的には特に連続性があるわけではない独立した作品。この映画はクライマックスに大がかりな霊現象とパニックが起きるが、それも学校内で起きた生徒の自殺事件に端を発した集団ヒステリーであるかのように描かれている。もちろん登場人物達はそれを亡霊によるものだと信じているわけだが、個々のエピソードの描き方が抑制されていて、映画を観る側にとっては「思春期特有の高ぶった神経が見せた幻」と解釈もできる余地を残してある。ショッキングな描写やグロテスクなシーンより、女子高生たちの心の揺れ動きを丁寧に追いかける中から、心の闇にある残酷性や孤独が浮かび上がってくるという作りだ。この映画の邦題が『少女たちの遺言』になっているのも、配給会社が作品からホラー色を除きたいという意図の現れかもしれない。これは脱ホラー化されたホラー映画です。

 描かれていることのほとんどは、女子生徒同士の間に芽生える恋愛感情であり、学校内での仲良しグループの存在や、その反対側にあるイジメの問題です。生徒に手を出す若い男性教師や、生徒に暴力を振るう威圧的な教師も登場しますが、これらは映画の中の小さなエピソードに過ぎません。物語はすべて学校の中という閉じられた空間の中で成立し、学校の外にある世界はまったく描かれていない。こうした外界から隔離された雰囲気が、映画全体から生活の匂いを消し去り、テレパシーや霊の降臨といった超常現象を成立させる手助けとなっている。この映画に一番似ている映画は、金子修介のファンタジー映画『1999年の夏休み』だと思う。

 ただしこの映画、構成がひどくわかりにくい。映画の中の現在、交換日記に描かれている過去、ミナやシウンの回想シーン、幻想や幽霊として姿を現すヒョシンなどが入り乱れて、観ている方は自分が今なにを観ているのか混乱してしまうのだ。時間の推移もわかりずらく、物語の冒頭から結末まで、いったいどのくらい時間が経緯しているのかわからない。テレパシーって何? 毒薬や解毒剤って何なの? こういうのって、同世代の女の子ならすんなりとわかるもんなんでしょうかね……。

(英題:MEMENTO MORI)

2001年12月中旬公開予定 シネマ・カリテ
配給:オンリー・ハーツ

(上映時間:1時間37分)

ホームページ:http://www.onlyhearts.co.jp/

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