時の香り
〜リメンバー・ミー〜

2001/10/05 徳間ホール
韓国映画『リメンバー・ミー』を吹石一恵主演でリメイク。
脚本がダメダメ。話にならないぐらい全然ダメ。by K. Hattori

 韓国映画『リメンバー・ミー』を日本で再映画化したもの。オリジナルの映画では西暦1979年に生きる女子大生と2000年に生きる男子大学生が無線機で話をするという設定だが、これは1979年と2001年に変えられている。主演は吹石一恵とこれがデビュー作の斎藤工。監督は『ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け』の山川直人。物語は基本的にすべてオリジナル版と同じで、物語ばかりか登場するエピソードや台詞まで同じ部分が多々ある。オリジナル版の脚本・脚色メンバーは「原案」とクレジットされているが、これは「原作」と表記しないと失礼ではないだろうか。設定だけ借りてまったく別の物語を作れば「原案」でもいいけど、これはそっくりそのままオリジナルをなぞっているだけです。正直言って僕はこの映画がなぜ作られなければならないのか、その必然性がまったく感じられなかった。低予算の秀作映画をメジャーがそれなりの予算をかけて再映画化するとか、何十年も前に作られて忘れられている映画を改めて映画化するというものではないのです。映画の規模としてはオリジナル版『リメンバー・ミー』の方が丁寧に作られているし、予算もかけてあるように見える。『時の香り〜リメンバー・ミー〜』はそれを日本に移して、安っぽく日本語化しただけではないのか。

 20年以上の時がたてば、世の中も人の気持ちも大きな変化がある。しかし変わらないものもあるのだ。韓国映画『リメンバー・ミー』はそうした変わるものと変わらないものを対比させながら、時代を超えて若い男女が心を通い合わせる物語だった。しかしそれをリメイクした本作は、おそらく予算不足や準備不足のためだろう、20年の時を隔てて移り変わっていく時代風俗の描写が明らかに物足りない。1979年(昭和54年)をその時代たらしめている物はいったい何なのか。オリジナル版の映画はそこに学生運動や戒厳令といった社会世相を重ね合わせることで、その時代を象徴的に描き出していた。でもこのリメイク版に、そうした「時代」はまったく見えてこない。校内暴力が起きる問題クラスが「3年B組」だという部分が、風俗描写のつもりなのだろうか。なぜ具体的に「金八先生」のタイトルが出せないのかは知らないが、仮に権利問題があって番組名や流行歌が使えないにしても、インベーダーゲーム、天中殺、ナウい、ヤング、ウオークマンの登場、口裂け女の噂など、ほんの一言で「ああ、あの時代か!」とわかるエピソードはいくらだってあるだろうに。まったく工夫がないよ。

 とにかく脚本がひどい。物語の舞台が大学と教育実習先の高校に分けられたことで、物語のテーマがずいぶんぼやけてしまっている。それにこの映画の中では、いったい教育実習期間が何ヶ月あるんだろう。(普通は2週間ぐらいだろうに。)腕を骨折したぐらいで、健康な男が何週間も入院するものだろうか。(腕の骨折じゃ普通は何日も入院しないよ。)こんなデタラメな脚本を作ってまで、なぜ再映画化の必要があるんだ?

2001年冬公開予定
配給:ドラゴン・フィルム

(上映時間:1時間17分)

ホームページ:http://www.rememberme-jp.com/

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