ゲット・イット・オン?

2001/09/27 TCC試写室
銀行強盗の籠城に巻き込まれた女子高生3人組の運命は?
周防玲子の映画デビュー作なんだそうな。by K. Hattori

 料理の不味さからいつも閑散としているロシア料理店「モルダウ」を舞台に、バイトの女子高生3人組と、間抜けな銀行強盗が織りなすドタバタ喜劇……のつもりが、まったく喜劇になっていないというドッチラケ映画。そもそも「モルダウ」という店名からして奇妙。モルダウ川(ブルタバ川)があるのはチェコなんだけどなぁ。そもそもこのあたりからして、この映画はどこかネジが緩んでいる。映画のネジが緩んでいるのか、映画を作っている人の頭のネジが緩んでいるのか、そのあたりは定かでないけれど、どうやら後者の気配が濃厚だと思われる。

 主演は周防玲子。バイト仲間の女子高生に金田美香と福井裕佳梨。この3人にはそれぞれ夢があり、その夢の実現のために各自が200万円の資金を必要としている。でも潰れそうなレストランのバイトでは200万など夢のまた夢。出るのはため息ばかりなのだ。そんなある日の昼下がり、レストランにひとりの男が飛び込んでくる。黒の目出し帽。わずかに見える口元に無精ひげ。右手にサバイバルナイフ。左手にはしっかりかかえたボストンバッグ。男は近くの銀行を襲って逃げる途中、レストランに飛び込んできたのだという。店の周囲はあっと言う間に警察に包囲され、男はもう絶体絶命。こうなれば自首するしかないと言う男に対し、女子高生3人組は「あきらめちゃ駄目。私たちが逃がしてあげるから、そのかわりにカバンの中身を少し分けて!」と言い出す。店長も人質籠城事件で店が有名になると計算し、彼女たちの提案に賛成する。かくして人質たちがやる気のない犯人をけしかけるという、前代未聞の籠城がはじまる。

 この映画の欠点は、まず第1に画面が暗いこと。これで低予算映画の貧乏くささが強調されてしまい、場面をレストラン内外に絞ったことも、登場人物の数が極端に制限されていることも含めて、「低予算映画ってたいへんだ」という映画製作のリアリズムを常に観客に意識させ続けることになってしまう。現実から一歩隔たったところに成立するナンセンス・コメディで、こんな舞台裏の現実を観客に突きつけてどうする。こんな画質にするくらいなら、16ミリで撮影せずにビデオ撮影したほうがよほどいい。なぜこの話を映画にしなければならないのか、映画にする際、なぜフィルムでの撮影にこだわらなければならないのか、そのあたりを企画の段階から練っておく必要があるんじゃないだろうか。

 物語が出鱈目なのは構わない。ご都合主義も予定調和も許容したっていい。要するにそうした出鱈目やご都合主義で、映画が面白くなるなら何だって許されるのだ。でもこの映画は、この出鱈目さとご都合主義によって何をやろうとしたのか、それがまったくわからない。この映画のどこが面白いのでしょう。同じ設定でもっと面白い話を考えることはいくらだってできるだろうに、なぜ面白くする努力をしないのか。タレントのスケジュールがタイトで撮影日数が取れないとか、どうせそんなつまらない理由なんだろうけどさ。あ〜あ。

2001年11月17日公開予定 シネマ・カリテ(レイト)
配給:メディア・スーツ

(上映時間:1時間31分)

ホームページ:http://www.getiton.jp/

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