ワイルド・スピード

2001/09/25 UIP試写室
大音響に身体がビリビリ震える大興奮の公道カーレース映画。
終盤のカースタントにめちゃめちゃ興奮する。by K. Hattori

 バリバリにチューンナップした市販車がロサンゼルスの市街地を時速300キロ近い速度でぶっ飛ばす、アメリカ版『頭文字〈イニシャル〉D』。登場する車はほとんどが日本車。トヨタのスープラ、マツダのRX-7、日産のマキシマ、スカイライン、240SX、三菱エクリプス、ホンダS2000、シビック、インテグラ。僕は自動車にまったく関心がないので、このあたりはプレス資料を丸写ししてますが、その物凄い改造ぶりは映画を観れば一目瞭然。1台の車に何万ドルもの改造費を突っ込み、ターボとNOS(ニトロ燃料噴射システム※)を付加することで、ボタンひとつで瞬時に時速270キロまで加速するモンスターマシンに仕立て上げる。この速度だと、翼があれば車が空を飛べるぞ。『頭文字〈イニシャル〉D』がもっぱらドライビングテクニックが問われる峠道のバトルを描いているのに対し、『ワイルド・スピード』は自動車をひたすら一直線に加速させるドラッグレース(ゼロヨン)の世界。細かなテクニック云々より、ここで問われるのは自動車のパワーとドライバーの勝負度胸なのだろう。

 輸送トラックを改造車で襲う強盗事件が続発し、警察は改造車レースにしのぎを削る若者グループの中に捜査員を潜り込ませる。捜査員はグループのリーダーが持つカリスマ性に惹かれ、その妹とも恋に落ちることで、仕事と個人的な感情との間で板挟みになる。この筋立てそのものは、キアヌ・リーブス主演の映画『ハート・ブルー』にちょっと似ているかもしれない。あちらは銀行強盗とサーフィンとスカイダイビングだったけど、若者に人気の過激なスポーツと犯罪捜査をからませるというアイデアはまったく同じ。主演はポール・ウォーカーとヴィン・ディーゼル。しかしこの名前を聞いて、すぐに顔が思い浮かべられる映画ファンはそう多くないはず。『ガール・ファイト』のミシェル・ロドリゲスと『姉のいた夏、いない夏』のジョーダナ・ブリュースターがタイプの違う女性を演じているけれど、これもそれほど大きく物語にからんでくるわけじゃない。要するにこの映画は、ドラマ性がきわめて希薄です。登場人物にものすごく魅力があるわけでもない。

 でもこの映画は猛烈に面白い。どこが面白いかというと、やはり自動車がカッ飛ぶシーンのスピード感が抜群で、画面を見ているだけで血中のアドレナリン量が2倍になるような興奮が味わえる。この興奮は耳をつんざくエンジン音が作り出している部分も多いので、この映画をビデオで見ても同じ興奮は絶対に味わえないと思う。もちろん音響設備と防音装置のしっかりしたホームシアターで、それなりの音量でビデオを見れば違うかもしれないけれど、そんな設備を持っている人がどれだけいることか。重低音に身体全体が揺すぶられ、高回転の金属音で皮膚の表面がちりちりと細かく振動するような音響は、映画館でこそ体験できるものだと思う。物語の内容はゼロだが、ストレス解消にはもってこいの映画だ。

(原題:THE FAST AND THE FURIOUS)

※劇中に登場するNOSについては掲示板で次のような指摘がありました
『さてさて「NOS」ですが、公式ページにもニトロ噴射装置って かいてあり、服部さんも当然そのまま表記してますが、間違っております。 NOS社という「会社名」でありニトロではなく「亜酸化窒素」 です。亜酸化窒素は高温で酸素に分解するので急激にガソリンを 燃焼させられるのです。鉄を焼ききるバーナーも亜酸化窒素を 用いますね。 ニトロなんて旧世代のもので、今では使いません。 それに、ガスボンベに入っていましもんね。コックを開くと シューって音がしてましたが、気体ですからね。ニトロは液体。(KOMO) 』

2001年10月公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:UIP

(上映時間:1時間47分)

ホームページ:http://www.uipjapan.com/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ