バレット・オブ・ラブ

2001/09/25 GAGA試写室
レオン・ライと瀬戸朝香が共演したアクション・ラブストーリー。
瀬戸朝香はひとり二役。監督はアンドリュー・ラウ。by K. Hattori

 レオン・ライ扮するサム刑事は、執念深い捜査の末、テレンス・イン演じる凶悪犯ナイトを逮捕し裁判に持ち込むことに成功する。罪状を立証するのは瀬戸朝香が演じる女検事のアンだ。彼女はサムの恋人でもある。苦しい裁判だったが、裁判長はナイトに有罪を宣告して5年の実刑判決を下す。だがこれを逆恨みしたナイトは殺し屋を雇い、サムの目の前でアンを殺す。それから2年。故郷である小さな漁村に戻って平和な暮らしをしていたサムのもとに、アンそっくりの日本人女性ユウが現れる。突然甦る2年前の忌まわしい記憶。だがそんな記憶を振り払うように、サムとユウは少しずつ親しくなっていく。

 日本人の女優が香港映画の大スターと共演した例としては、常盤貴子がレスリー・チャンと共演した『もういちど逢いたくて/星月童話』と、アンディ・ラウと共演した『ファイターズ・ブルース』がすぐに思い出される。しかしこの2本は、残念ながらさほど面白い映画と言えないものだった。今回の映画についてもあまり期待していなかったのだが、これが案に相違してわりと面白い。監督はレオン・ライと『ひとめ惚れ』で組んでいるアンドリュー・ラウ。『古惑仔』シリーズなど、元気のいいアクション演出で定評のある監督だけに、この映画もアクションの切れ味が抜群にいい。それに加えて『ひとめ惚れ』で見せたラブストーリー演出のうまさ。話には少々無理があるが、それをひとつひとつのシーンやエピソードの面白さで次々に乗り切っていく。

 銃を持って逃げる男が、人通りの多い交差点のど真ん中で殺し屋に射殺されるというオープニング。刑事たちが容疑者のいるクラブになだれ込むと、そこで突然銃撃戦が始まるという緩急のコントラスト。舞台をパリに移した後も、サムとアンに近づく殺し屋の影をスリリングに描き、あまりにも劇的で残酷なサムとアンの別れに導いていく。こうした映画序盤のアクションシーンはどれもボリューム感があって、アンドリュー・ラウ監督の手慣れたアクション演出の職人芸を味わうことができる。

 こうしたスリルとスピード感たっぷりの序盤があるから、そこから舞台が漁村に移った時の落差も大きい。そしてこの落差があるからこそ、サムが恋人を失った心の傷を癒すのはこんな場所しかないだろうと観客も納得できるし、そこでサムが新たな女性と出会って恋に落ちることにも納得してしまう。よく考えると……、いや、よく考えなくても、この展開はかなり強引なのです。映画の終盤になって、ユウの正体と本当の目的が観客の目に明らかになった時点で、その強引さはあからさまな違和感に近づいていく。でもその違和感を、終盤のアクションシーンで粉々に粉砕してしまうという構成の素晴らしさ。「なんだかなぁ……」「おいおい、それでいいのかよぉ」と思い始めていた気持ちも、切れ味の鋭いアクションが連続するとどうでもよくなってきてしまう。これは作り手の確信犯。結論を出さずにすべて誤魔化すずるい演出。でもこのずるさこそが映画なのです。

(原題:不死情謎 BULLETS OF LOVE)

2001年11月公開予定 有楽町スバル座
配給:ギャガ・コミュニケーションズ

(上映時間:1時間45分)

ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/bol/

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