赤い橋の下のぬるい水

2001/09/13 松竹試写室
今村昌平監督が『うなぎ』のメンバーで作った大人のファンタジー。
史上最強(?)の潮吹き女を清水美砂が好演。by K. Hattori

 カンヌ映画祭でパルムドールを2回も受賞している今村昌平が、『うなぎ』『カンゾー先生』に続いて撮った最新作。この映画もカンヌに出品されたが無冠。いくら何でも3回もパルムドールを取ろうというのは欲張りというものだから、この結果はまぁ甘受すべきなのかもしれない。そもそもカンヌの受賞歴なんて、映画自体の面白さとはまったく何の関係もない。僕はパルムドール受賞作の『うなぎ』より、今回の『赤い橋の下のぬるい水』の方が面白いと思ったし好きだ。主演は役所広司と清水美砂。『うなぎ』と同じ主演コンビだ。しかし妙に枯れた作風になり、まるで干物か薫製のようになっていた『うなぎ』と違い、今回の映画には瑞々しい生命力が満ちあふれている。ちょっと不気味で、不思議で、笑いがある。そして何よりエロチック。いや、エロという横文字はあまり似合わない。これは明るく助平なのだ。

 会社の倒産で職安通いをしている笹野陽介は、不思議な縁で親しくなったホームレスの老人から、奇妙な話を聞かされる。昔は泥棒だったというその老人は、京都の寺から盗んだ金の仏像を持って能登半島の付け根にある小さな町に逃げ込み、河口近くの赤い橋が見下ろせる家に仏像を隠したままその町を逃げ出した。それから50年もたっているが、老人は仏像のことが気になって仕方がない。自分は今更その家に行くつもりもないが、どうか自分の代りにその家を訪ねて仏像を取ってきてはくれまいか。仏像はあんたが金に換えればいい。自分はその話を聞くだけでいいのだ……。老人は笹野にそう言い残して急死。笹野は遺言めいた老人の言葉が気にかかり、出来心のような軽い気持ちで北陸の小さな町を訪ねる。そこには確かに赤い橋があり、老人の話したとおりの家がある。笹野はその家で、サエコという女に出会う。

 ウソかホントか知らないけれど、誰もが知ってる女体の神秘。今から20年ほど前まで、それはGスポットだった。でも今やGスポット程度のことでは誰も驚かない。今もっともトレンディなのは潮吹きだ。潮吹きとはなんぞや。そんな現象が実際にあるのか。それは僕にもよくわからない。しかし『赤い橋の下のぬるい水』は、潮吹き女の話である。清水美砂がセックスすると潮を吹くのである。しかもその量たるや、相手をしている役所広司が全身ずぶ濡れになるほど。ヒロインのサエコは日頃から体の中に少しずつ“水”が溜まり、時々セックスしてそれを出さないと苦しくて苦しくて仕方がなくなるのだという。そしてセックスすると、身体に溜まった水が盛大にほとばしる。まるで噴水のように。

 とにかくこの潮吹き現象の描写があまりにも馬鹿馬鹿しくて、ナンセンスで、ファンタジック。それが物語の中で積み上げられている日常性を、徹底的に粉砕してしまう。セックスというひどく俗っぽい行為の結果として、ヒロインの肉体が非日常空間を生み出す面白さ。この落差を一身に体現している、清水美砂の存在感が素晴らしい。僕もこんな女性と付き合ってみたいものだ。

2001年11月3日公開予定 渋谷東急3他・全国松竹東急系
配給:日活 問い合せ:日活、ライスタウンカンパニー
(上映時間:1時間59分)

ホームページ:http://www.akaihashi.com/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ