劇場版 
幻想魔伝 最遊記
Requiem
選ばれざる者への鎮魂歌

2001/08/14 松竹試写室
古典「西遊記」を現代風に大幅アレンジしたアドベンチャー・ロマン。
テレビアニメ化された人気コミックの劇場版。by K. Hattori

 中国の古典伝奇小説「西遊記」をもとに、キャラクターやストーリーの設定を大幅にアレンジした人気冒険マンガ「最遊記」。この映画はその原作をもとに作られたテレビアニメ・シリーズ「幻想魔伝・最遊記」の劇場版。原作やテレビアニメ版では玄奘三蔵の一行と牛魔王の対決が軸になっているようだが、この劇場版はそこから離れた番外編。「最遊記」の世界観がわからなくても、原作である「西遊記」の世界を知っていれば何となく内容が理解できるようになっている。(ATOKだと玄奘・孫悟空・猪八戒・沙悟浄などがすべて一発で変換される。さすが「西遊記」だなぁ。感心してしまった。)また玄奘たちをつけねらう紅孩児(これは変換できず)たちも一応登場するので、「幻想魔伝・最遊記」の世界観もその一端が伺えるというバランスのいい構成だ。僕は原作もテレビシリーズも知らないが、十分に楽しめました。

 西域の天竺国を目指して旅を続ける玄奘三蔵たち4人は、巨大な怪鳥に襲われていた少女を助け出す。彼女の案内で、彼女が住むという屋敷へと向かった玄奘たちは歓待を受けるが、屋敷の主人は姿を現さなかった。広い屋敷の中にそれぞれ部屋をあてがわれた4人は、その夜の内に次々刺客に襲われる。その刺客たちは、仲間そっくりの姿をしていた。屋敷の主人は幻覚を操って、玄奘たち4人を巨大な罠に陥れていく。敵の正体は何者なのか? その目的はいったい何なのか?

 登場人物達のキャラクターはオリジナルの「西遊記」と似ても似つかぬように見えて、その実けっこうオリジナルの骨子に忠実だったりするのが面白い。こういう作品を入り口にして、オリジナル版「西遊記」の世界に入っていく人も多いかもしれない。「西遊記」はそもそもの成り立ちそのものが口伝小説で、長い年月をかけて多くの人の手を経て成立した作品。現在は一応完成した定本とうものがあるのだが、もともとの成り立ちを考えれば、後世の人間がそれに手を加えて悪いはずがない。好き勝手にいじくり回せばいいのです。ひょっとしたら、それが新たな古典になり、別の定本として定着するかもしれない。同じく「西遊記」に材を取った諸星大二郎の「西遊妖猿伝」なども、そうした古典再解釈のひとつだと思う。(これも未だ完結していないのだけれど。)

 今回の映画では玄奘一行を襲う謎の妖怪の正体がひとつのテーマになるのだが、物語は単なる謎の種明かしになっていて、人間関係の不思議さが生み出す悲劇の掘り下げがイマイチかもしれない。むしろ面白いのは、目の前にいる仲間が本物なのか偽者なのかという疑心暗鬼が生まれるサスペンス。どうせ最後は主人公たちが勝つとわかっているからスリルはあまりないけれど、偽者がいかにも本物くさい言動をするのが面白く、このネタだけで全体の3分の2ぐらいを引っ張ってしまう。

 僕はこの作品につてまったく知らなかったのでウェブでちょっと調べたら、出てくる出てくるファンサイトの数々……。なんだかとてもびっくりしてしまいました。

2001年8月18日公開予定 渋谷シネパレス他・全国松竹系
配給:松竹
(上映時間:1時間35分+主題歌プロモ映像5分)

ホームページ:http://www.shochiku.co.jp/saiyuki/

Click here to visit our sponsor

ホームページ

ホームページへ