ムーラン・ルージュ

2001/08/09 よみうりホール
ニコール・キッドマンとユアン・マクレガー主演のミュージカル大作。
ロックの名曲が次々に登場して効果的に歌われる。by K. Hattori

 『ロミオ&ジュリエット』のバズ・ラーマンが、ニコール・キッドマンとユアン・マクレガー主演で描く豪華絢爛なミュージカル大作。物語の舞台は19世紀末のパリ・モンマルトルに実在したミュージックホール“ムーラン・ルージュ”。画家のロートレックや音楽家のサティなど、当時のモンマルトルを徘徊する芸術家たちが実名で登場するが、この映画はモンマルトルやムーラン・ルージュの現実をそのまま描いているわけではない。この映画に登場するのは幻想のパリであり、幻想のモンマルトルであり、幻想のムーラン・ルージュなのだ。

 物語は20世紀を翌年に控えた1900年のパリ。ムーラン・ルージュの赤い風車を目の前にした下宿屋の屋根裏で、ひとりの作家が自らの思い出話を書き綴っている。それはちょうど1年前、彼がパリにやってきたときから始まった。作家志望の若者クリスチャンは、同じ下宿のボヘミアンたちとムーラン・ルージュのショーを企画する。経営者シドラーに企画を通す突破口として、花形ダンサーであり高級娼婦でもあるサティーンを口説き落とそうとするクリスチャン。最初は彼をパトロンのウースター公爵と勘違いしたサティーンだったが、彼の才能と情熱にいつしか惹かれていくようになる。互いの気持ちを隠して、公爵をショーのパトロンに付けることに成功したものの、公爵に隠れて逢い引きを続けるふたりの関係が長く続くことはなかった……。

 物語そのものは非常に陳腐だ。美しい踊り子と貧しい作家の純愛。金にものを言わせてヒロインを我がモノにしようとする恋敵。この人物配置は『タイタニック』と一緒だ。さらにこの映画には、悲恋物語の定番アイテムである「ヒロインの不治の病」まで登場する。粗筋だけ聞いたら吹き出してしまうようなアナクロさ。しかしこの映画はそんな陳腐な物語を踏み台にして、あっちこっちに飛んだり、こっちに跳ねたり、気が付くと宙返りしていたりと、アクロバティックな語り口で観客を翻弄する。古典的メロドラマという強い求心力がなければ、この映画は開始から5分で空中分解するだろう。

 音楽はほとんどすべてが既製曲というのはミュージカル映画ではよくあるが、この映画ではビートルズ、マドンナ、エルトン・ジョン、T−レックス、クイーン、ポリス、デビッド・ボウイ、ホイットニー・ヒューストンなど、ロック系の音楽をふんだんに使っているのが特徴。1曲歌って恋に落ち、1曲歌って仲直り。歌がドラマを紡ぎ出し、歌が恋心の橋渡しをするという古典的なミュージカル文法が見事に踏襲されている。圧巻は象の部屋で主人公ふたりが恋のデュエットをする「エレファント・ラヴ・メドレー」と、マドンナもびっくりの「ライク・ア・ヴァージン」、そしてショービジネスの残酷さを歌い上げる「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」。

 毒々しくて下品なところがあるので、好き嫌いは評価が別れそう。ボリューム感たっぷりなのはいいが、息抜きできるところがないので少々疲れるかもしれない。

(原題:MOULIN ROUGE)

2001年11月中旬公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
(上映時間:2時間8分)

ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/moulinrouge/

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