イルマーレ

2001/07/26 松竹試写室
2年の時を隔てて若い男女が手紙のやりとりをする物語。
なかなかよい雰囲気の映画。デート向けにいいかも。by K. Hattori

 クリスマスを間近に控えた12月21日、声優の卵をしているキム・ウンジュは海辺の家「イルマーレ」から、ソウル市内のマンションに引っ越していく。自分の後から引っ越して来るであろう住人宛の手紙を、郵便受けに残して……。数日後、この家に引っ越してきた青年ハン・ソンヒョンは、ポストの中の手紙に気づいて不思議に思う。自分が引っ越してくる前、この家には誰も住んでいなかったはず。そもそも現在は1997年なのに、手紙の日付はどうして1999年になっているのか?

 2年の年月を隔てて、若い男女が手紙をやりとりするというファンタジックなラブストーリー。韓国本国では昨年秋この映画が公開される数ヶ月前の春、21年の時を隔てて無線で男女が交信するという映画『リメンバー・ミー』が公開されている。日本ではちょうど同じ時期にこの2本の映画が公開されるわけだが、作品の雰囲気はずいぶん異なっていて似た映画という印象は受けなかった。むしろ『リメンバー・ミー』は、アメリカ映画『オーロラの彼方に』に似すぎです。(でも『リメンバー・ミー』って、日本でリメイクするんだよね。)監督はこれが3本目のイ・ヒョンスン。主演は『インタビュー』『純愛譜』の日本公開が控えているイ・ジョンジェと、これが映画2本目というチョン・ジヒョン。イ・ジョンジェは清潔感がある精悍な顔立ちで、いかにも今風の青年という雰囲気。チョン・ジヒョンはちょっとスー・チーに雰囲気が似た庶民的美女。

 画面の色遣いも独特でずいぶんと垢抜けた印象を受けたのだが、それより何より印象的なのは、海辺に建てられた「イルマーレ」という舞台装置。琵琶湖の浮御堂のように海岸から海に突き出た場所に建てられているこの一軒家は、映画のために特別に造られたのだという。潮が引けばイルマーレの周辺は砂浜になるが、潮が満ちてくれば周囲は完全な海になり、家全体が海の上に浮かんでいる形になる。イルマーレは海と陸の境界に建てられ、そのどちらにも属し、そのどちらにも属していない存在なのだ。海と陸という2つの世界の境界に建つこの建物は、それだけで何やら神秘的で神話的な気配が漂う。これが2年という年月を越えて男と女が出会う場所だと言われると、「なるほど」と納得させられてしまうのだ。

 韓国の郵便制度がわからないので、イルマーレのポスト経由でなぜ手紙のやりとりができるのかは謎。でもこれは「そういうもんだ」と思うしかない。僕は『リメンバー・ミー』で登場人物達が運命をそのまま受け入れてしまうことに疑問を感じたのだが、この映画では未来と過去が交流を持つことで当然発生するであろうタイムパラドックスの問題に少し踏み込んでいる。これも突き詰めて考えていくと「ホントにそれでいいのか?」と思えなくもないけれど、これはこれでOKでしょう。物語も映像も音楽も、すべてに洗練された雰囲気の漂う作品。韓国映画はどんどん進化しているなぁ……。

(原題:時越愛)

2001年9月公開予定 渋谷シネパレス
配給:松竹 宣伝:パンドラ 宣伝協力:スキップ
(上映時間:1時間37分)

ホームページ:http://www.shochiku.co.jp/cinema/il-mare/index.html

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