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2001/07/18 よみうりホール
ロバート・デ・ニーロ、マーロン・ブランド、エドワード・ノートン共演。
オーソドックスな犯罪映画だがきちんと面白い。by K. Hattori

 この道25年という大ベテランの金庫破りニック・ウェルズは、カナダのモントリオールで高級ジャズクラブを経営しながら、時折アメリカに仕事に出かけるという生活を続けていた。だがある日パートナーのマックスから持ちかけられたのは、地元モントリオールの税関倉庫の金庫から、高価な骨董品を盗み出すという仕事。報酬は400万ドル。これだけあれば店のローンをすべて払い、犯罪稼業から足を洗って恋人と落ち着いた暮らしを始めることができる。願ってもないチャンスだ。だが問題は、マックスが今回の仕事の手引き役として指定したジャック・テラーという男が信用できないこと。ニックは長年に渡る信頼関係なしには、他人と組んで仕事をしない主義なのだ。だが仕事の主導権を自分が握るという条件で、ニックはこの仕事を引き受けることにする。

 主人公ニックを演じるのはロバート・デ・ニーロ。パートナーのマックス役はマーロン・ブランド。計画を手引きするジャックを演じているのはエドワード・ノートン。そしてニックの恋人役はアンジェラ・バセット。役者の顔ぶれは豪華で、これがうまくツボにはまればすごい映画になりそう。しかし不安材料は監督が『イン&アウト』のフランク・オズだということ。この素材って、どうもオズ監督向けのものだとは思えない。変にいじくり回して、つまらない映画になることは避けてほしいというのが映画を観るまえの僕の願いだった。しかしその点は監督も先刻ご承知のようで、この映画では奇をてらわないオーソドックスな演出に徹している。役者に細かな注文も出さず、わりと自由に演じさせている様子も見受けられる。そのためか、ドラマはかなりハードなものなのに、映画が持っている雰囲気はすごく柔らかい。芝居がアドリブということもないのだろうが、登場人物達の台詞のやりとりやちょっとした仕草まで、ごく自然にその場の雰囲気から出てきたような伸びやかさがある。ただしこれはブランド、デ・ニーロ、ノートンの3人に言えることで、アンジェラ・バセットは芝居がちょっと固すぎる気もした。演技派で有名な3人の俳優を前にして、ちょっと背伸びしちゃったのかな。この辺は監督が彼女に指示を与えてもよかった部分だと思う。

 映画冒頭の宝石泥棒のシーンから、物語の中にぐいぐい引き込まれていく。まったく無駄口を叩かず、無駄な動きもせず、精密機械のように緻密に組み立てられた計画を遂行していくニックの格好良さ。まさにこれがプロの仕事という感じ。このシーンがあるから、その後のジャックとの会話で「仕事で冒険したことはない」という台詞が生きてくる。完璧な準備をして自分が絶対安全だという確証がないうちは、ニックは決して動かない。

 映画を観ながら僕はなぜか「鬼平犯科帳」の盗賊たちを連想した。そもそも池波正太郎は外国の犯罪映画をモデルに「鬼平」を書いたのだけれど、最近はそうした本格的犯罪映画が少なくなっていたのだ。池波正太郎がこの映画を観たら、すごく喜んだと思う。

(原題:THE SCORE)

2001年秋公開予定 日比谷映画他・全国東宝洋画系
配給:日本ヘラルド映画
(上映時間:2時間5分)

ホームページ:http://www.high-score.jp/

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