ロンドン・ドッグス

2001/07/13 メディアボックス試写室
『ファイナル・カット』のメンバーが作った異色のギャング・ムービー。
アイデア倒れも多いけど勢いがあって楽しい。by K. Hattori

 『ファイナル・カット』のドミニク・アンシアーノとレイ・バーディスのコンビが、ジュード・ロウなど前作とほぼ同じメンバーで作った異色のギャング映画。ジュード・ロウの役名はジュード、ジョニー・リー・ミラーの役名がジョニー、セイディ・フロストはセイディを演じ、レイ・ウィンストンがレイ、ジョーン・パートウィがショーン、キャシー・バークがキャシーを演じており、監督のドミニク・アンシアーノは愛称のドムで、レイ・バーディスはそのままバーディスという名前で登場するなど、役者たちの名前と役名がほぼ一致している。これは『ファイナル・カット』と同じで、現実と虚構をまぜこぜにする手段のひとつだろう。でもリス・エヴァンスはなぜかマシュー。なんでだろう……。

 ギャングにあこがれるジョニーが、幼なじみで親友のジュードのコネを頼って、彼の叔父で、ロンドンの半分を仕切っている大物ギャング、レイの組織に入ることになった。ところがレイは恋人セイディと結婚間近で、どうも行動が弱気になっている。派手な人の動きがないと組織での出世はままならず、そのためには対立組織との抗争が欠かせない。ジョニーはロンドンの南を牛耳るショーンの組織を挑発することで、レイの組織の中で自分の地位を固めていく。最初はそんなジョニーを頼もしいと思ってもいたレイだったが、ジョニーの行動はますますエスカレートしていってしまう。

 ピエロの格好をしたジョニーがこれまでの経緯を解説するという構成だが、なぜ彼がピエロの格好なのかという種明かしがあまり生きておらず、むしろ彼の突飛な姿が物語の流れをせき止めているような感じもする。ジョニーのピエロを登場させるなら、ジュードやマシューも同じような仮装で登場させて、それぞれの立場で自分の見た事件の顛末を説明させれば面白かったと思う。登場人物達がしばしばカラオケを歌うというアイデアも、終盤にあるパーティ場面のカラオケシーンとうまくかみ合っていなくて、面白いけれどアイデア優先だと思う。

 映画で面白いのは筋立てそのものではなく、登場人物同士の他愛のない会話など、本筋そのものからは離れた部分。このあたりは日頃から顔見知りの間柄で、しかも本名(芸名)と役名が一致しているという虚実ないまぜの構成が生み出す、「この人たちって普段からこんな調子なんじゃないの?」という虚構と現実の接近ぶり。実生活ではジュード・ロウ夫人であるセイディ・フロストがレイ・ウィンストンの婚約者を演じることで、この映画は明確に現実と一線を画しているのだが、それでも芝居の筋立てから離れたところは、やっぱり「こんな人たちなの?」というリアリティに満ちている。

 ジュード・ロウは今回脇役で、主役はジョニー・リー・ミラー。主演作『プランケット&マクレーン』では薄ぼんやりした印象しかなかった彼だが、今回は役柄の輪郭も明確で好感が持てる。ただ演技が上手いのかというと、そういうわけでもないんだけどね。

(原題:LOVE, HONOUR & OBEY)

2001年8月下旬公開予定 シャンテシネ
配給:ザナドゥー、アスミック・エース 宣伝・問い合わせ:ザナドゥー

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