バッド・スパイラル
運命の罠

2001/06/13 TCC試写室
エリート弁護士が犯した罪の行方。主演はビル・プルマン。
ガブリエル・アンウォーはもうだめだなぁ。by K. Hattori

 味方に付ければ気さくないい奴だが、敵にすると陰湿で陰険な本性をあらわにする嫌な奴。それがビル・プルマンだ。『インデペンデンス・デイ』の大統領演説で映画館に詰めかけたアメリカ人観客のハートを熱く燃え上がらせたこの男が、『ジャック・サマースビー』でバケツ一杯の芋虫をジョディ・フォスターに押しつけ、『めぐり逢えたら』でメグ・ライアンにねちっこくからみ、『ロスト・ハイウェイ』で妻をめった刺しにした過去を映画ファンは忘れない。この映画はそんなビル・プルマンが、思い切り粘着質な悪党を演じるサスペンス・ドラマ。気が弱いくせにプライドだけが強く、権力と財力を使った回りくどい方法で自分の敵を排除するあたりは、ビル・プルマンの嫌味なキャラクターが存分に生かされている。「振られ男」というプルマンのもうひとつの顔も、この映画の中ではちゃんと再現されているのが偉い。

 この映画でプルマンが演じてるのは、アメリカ法曹界で知らぬ者のない敏腕弁護士カラム・クレイン。裁判に勝つためなら手段を選ばない彼の手法を批判する声も多いが、連戦連勝で負け知らずの彼が連邦判事としてアメリカ法曹界のトップに上り詰めるのも時間の問題だった。そんな彼が酔った勢いで、事務所の新入り秘書ソフィーと強引に関係を結んでしまった。きまりが悪くなったクレインは、数日後に彼女を事務所から解雇。これに怒ったソフィーは、クレインをレイプの加害者として訴えると言う。連邦判事への就任が正式に決定した彼にとって、この事件は命取りのスキャンダルだった。

 話はわりとよくできていて、中盤から最後のオチまで鮮やかに決まる。しかしこの映画、物語の序盤にはいくつかの問題点も抱えている。最大の問題点は、クレインがソフィーを本当にレイプしたのかという点。ここは「本当にレイプだったがその証拠がない」と観客に納得できなければいけないのだが、肝心の場面はなんだか画面が白くすっ飛んでいて、そこで何が行われたのかまるでわからない。クレインは本当にソフィーをレイプしたのか? 僕はこの場面を見ていて、ソフィーがクレインを罠にはめるため自分から誘ったのだと思った。部屋に入ったときクレインが泥酔してロレツが回らず足元がふらついていたのに対し、ソフィーがわりとしっかりしていたという描写があるし、ソフィーのお尻の入れ墨も気になる。今時入れ墨なんてごく普通の人でもしているのかもしれないけれど、映画の中で、ごく普通の女性のお尻に入れ墨があるなんてことはあり得ない。これは観客に何らかの疑惑をもたれても仕方がないよ。

 もうひとつこの映画で気になったのは、クレインの事務所でターニャを見て一目惚れしたはずのネイサンが、どういうわけかルームメイトのソフィーを好きになってしまうこと。これはちょっと不実な態度と言えないか? ガブリエル・アンウォーは確かに美人だけど、『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』や『デンバーに死す時』の輝かしさは、もはや失われています。

(原題:THE GUILTY)

2001年7月下旬公開予定 渋谷・シネマ・ソサエティ(レイト)
配給:マイピック 宣伝:FREEMAN

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