リメンバー・ミー

2001/06/07 メディアボックス試写室
古ぼけた無線機が21年を隔てた現代と過去を結びつける。
韓国版『オーロラの彼方へ』だけどSF色は薄い。by K. Hattori

 月蝕の夜、古ぼけた無線機から聞こえてきた声。それは21年の歳月を越えて、ふたりの人間を結びつける。なんだかデニス・クエイドとジム・カヴィーゼル主演のアメリカ映画『オーロラの彼方へ』を思わせる設定だが、ふたつの映画は同じ年に製作されているので、どちらがどう真似をしたのか、それとも単なる偶然なのか(そんなことってあり得るのか?)判断が付かなくて気持ちが悪い。ただし『リメンバー・ミー』は「無線機が過去と未来をつなぐ」というアイデアだけが『オーロラの彼方へ』と共通するところで、『オーロラ〜』にあったタイムパラドックスの問題などには深く踏み込んでいかない。現代の青年が自分の両親の青春時代に介入し、その結婚の橋渡しをするという部分は、むしろ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』からの影響だろう。主人公ふたりが最初に待ち合わせをする場所が「時計台」である点からも、この映画が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズから受けた影響を隠していないことを示している。

 「時間を超える無線機」という魅力的なアイテムを用意しながら、この映画はそれをSF的な仕掛けと結びつけていかない。これはSF映画ファンには大いに物足りないところだと思う。「なぜ過去と未来で交信できるのか」という理屈はどうでもいいのだが、観客が興味を持つのは「未来の情報が過去に介入したとき、過去はどう変化するのか。その変化が未来にどんな影響を与えるのか」という、タイムパラドックスの問題だろう。しかしこの映画は、それに少しも触れることなく終わる。この映画で描かれるのは、現代の男子大学生と20数年前の過去を生きる女子大生が無線を通じて知り合い、現代の大学生は自分の生まれる前の時代について学び、ふたりは昔も今も変わらない恋の悩みについて思いを巡らせる。要するにそれだけのお話なのだ。

 この映画がタイムパラドックスの問題に触れないのは、ヒロインがやすやすと自分たちの未来を受け入れてしまうからだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も『オーロラの彼方へ』も、主人公たちは何とかして過去を変え、未来を自分たちの思う方向に誘導しようと四苦八苦する。しかし『リメンバー・ミー』のヒロインは、自分の知った未来をそのままありのままに受け入れてしまうのだ。これって一種の運命論や決定論? 僕はこの点にすごく大きな疑問を持つ。本当のところはよくわからないけれど、「自分の運命は自分で切り開くぞ!」「決定された未来と戦うぞ!」という気概があってこその“青春映画”だと思うんだけどなぁ……。

 ヒロインの先輩に対する一途な想いに、観客は誰しも共感し、彼女を応援したくなるだろう。伝えたくても自分の気持ちがなかなか伝えられないもどかしさ。相手の態度に一喜一憂し、後から舞い上がったり落ち込んだり。そんな恋する気持ちが、じつに巧みに描かれている映画です。僕はこの映画のラストに釈然としませんが、それは単に僕の「好み」の問題かもしれないな。

(原題:同感 DITTO)

2001年今秋公開予定 シネマスクエアとうきゅう
配給:ドラゴン・フィルム

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